研究実績の概要 |
東海村から神岡のSuper-Kamiokandeへ向けて照射されるニュートリノビームを観測する実験, T2Kにおいて, Super-Kamiokandeとほぼ同位置に立地するKamLAND検出器でもおなじニュートリノビーム事象を観測できることを明らかにした. 特にT2K run3からrun9までのデータについてKamLANDでのデータ解析を行いT2Kニュートリノビーム時刻に相関した, 背景事象ではないような事象を確認した. KamLANDの体積はSuper-Kamiokandeに比べて1桁程度小さいものの, Super-Kamiokandeよりも高い中性子捕獲事象の同定率をもつことを明らかにした. また有意にミュー型ニュートリノビームが減少していることを捉え, KamLAND検出器を使った初めてのニュートリノビームにおけるニュートリノ振動の効果を確認するに至った.
またKamLAND検出器の応答特性を再現したシミュレーションを構築し, ニュートリノビーム事象時に予想されるエネルギー分布を確認した. 200MeV--1GeVの範囲でおおむね予測どおりの結果が得られ, シミュレーションとデータ解析の妥当性が確認された. 100MeV以下の低エネルギー帯において, 得られたデータと予測との間に多少の乖離が見られたが, これがシミュレーションの調整不足によるものなのか, 何らかの未発見物理現象に由来するものなのかは明らかではなかったため, 今後の課題である.
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