研究実績の概要 |
ニュートリノ研究の中心課題は、ニュートリノ振動パラメタさらに質量の絶対値Majorana粒子/Dirac粒子の解明である。この際の、ニュートリノ反応は、核子多体系として理解される低エネルギー領域から、中間子生成が主要となる核子共鳴領域、さらにはクォーク・グルーオン自由度で表される深非弾性領域にわたるニュートリノ反応の理論的記述を精密化が求められている。我々は、電子散乱、中間子生成反応の包括的解析から、従来の模型を大幅に進化させた、中間子生成反応DCC模型を構築した。 1)今回、DCC模型における軸性ベクトル流の考察を行った。軸性ベクトル流とベクトル流の干渉項は、ニュートリノ反応と反ニュートリノ反応の差異をもたらし、軸性ベクトル流の性格な記述は非常に重要である。ここではベクトル流の共鳴粒子形状因子の運動量移行依存性を軸性ベクトル流形状因子に流用し、DCC模型の軸性ベクトル流強度不足が大きく改善されることを示した。 2)DCC模型を用いて準弾性散乱と共鳴領域におけるinclusive 12C(e,e')反応の解析を行った。Benharらが開発したSpectral functionを用い準弾性散乱に、DCC模型による共鳴の寄与に中間子交換電流を加え、inclusive電子散乱断面積を解析した。その結果、DCC模型を用いることによりデルタ共鳴領域より高いエネルギー移行領域でパイ中間子生成以外の顕著な寄与が見られた。また、いくつかの電子エネルギー、散乱角において、デルタ共鳴付近でデータとの不一致が残った。このことは核内における共鳴の伝搬、中間子生成領域における交換電流の考察など、さらなる課題があることを示した。
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