研究領域 | ニュートリノで拓く素粒子と宇宙 |
研究課題/領域番号 |
19H05107
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
平木 貴宏 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任助教 (40791223)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ニュートリノ / 原子・分子物理 / レーザー分光 / キセノン |
研究実績の概要 |
SPAN (SPectroscopy with Atomic Neutrino) 計画は、原子・分子の脱励起過程のうちニュートリノ対と1 光子を放出するRENP過程の光子エネルギースペクトルを詳細に調べることにより、ニュートリノの絶対質量などの未知のパラメータを包括的に決定することを目的としている。RENP過程は非常に起こりにくいため、この計画を実現する上で、マクロコヒーレント増幅機構(量子干渉性を用いた反応レートの増幅効果)は、核心となる原理である。現在はこの増幅原理を多光子過程での観測を通して詳細に理解することを進めている。本研究では、磁気双極子(M1)遷移や電気四重極(E2)遷移を伴う二光子E1×M1、E1×E2 過程と三光子E1×E1×E1 過程について検証する。これらの過程のレート増幅は最低次の多光子過程であるE1×E1過程より遷移が起こりにくく、実験的検証がこれまで進んでいない。実験との比較により上記の高次過程におけるレート増幅原理を詳細に検証することが本研究課題の目的である。 実験はXe 原子気体に波長298nm のパルスレーザーを入射し、Xeの基底状態(5p)から励起状態(6s)にE1×M1(E2)過程による同色二光子パルスで励起してコヒーレンスを生成する。本年度は励起状態のXe原子に波長823nmのCWレーザーを入射し、脱励起過程により生成する895nmの光を検出することでXe原子の励起レートを見積もった。また、光学ブロッホ方程式を用いた数値シミュレーションを行い、得られた励起レートの実験値と比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Xe原子のE1×M1(E2)過程の励起レートを測定した結果、シミュレーションで予測される励起レートより2桁程度小さいことが分かった。励起レートが低いためXe原子に生成されるコヒーレンスも小さく、増幅された脱励起光を観測することが現状難しい。
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今後の研究の推進方策 |
Xe原子の励起レート計算のシミュレーションでは多くの中間状態の遷移強度を計算する必要があるが、より多くの中間状態の寄与を加えたシミュレーションを行い、実験値と大きく励起レートが異なる理由について考察する。
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