研究領域 | ニュートリノで拓く素粒子と宇宙 |
研究課題/領域番号 |
19H05108
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
石野 宏和 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (90323782)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ニュートリノ / 超伝導検出器 |
研究実績の概要 |
ニュートリノ絶対質量測定や電子ニュートリノの検出を目指した超伝導技術を用いた新規な検出器を開発する。レーザー加工により標的表面に微細コーン構造を形成し、それを超伝導検出器に接続することにより、標的内で発生するフォノンを効率よく検出し、付与エネルギーを測定する。まずは微細コーンの構造形成の開発を行った。フォノンの伝導をよくするには、ウィンストンコーンを形成する必要がある。そこで、東京大学のレーザーシステムを利用し、照射時間・強度・掃引手法を最適化することにより、構造形成に成功した。電子ニュートリノの標的では金属Inを用いる。Inは融点が低く柔らかいので、直接でのレーザー加工が難しい。そこで、まずシリコン基板に逆パターンを持つ鋳型をレーザーで掘り、そこに溶融Inを流し込み、冷やして取り出す手法を試した。当初取り出すときにInコーンが折れてしまい低い歩留まりしか得られなかったが、超音波発生装置と3Dプリンターによる取り出しジグを作製することにより、高い歩留まりで取り出すことに成功した。また、並行して超伝導検出器の開発を行った。コーンを装着する部分を持つKID (Kinetic Inductance Detector)を独自の技術でデザイン・作製した。産総研の施設CRAVITYを利用して作製し評価したところ、当初全く動作しないことがわかった。原因を調べたところ、Inを張り付けるために必要な金属薄膜部分に不具合が見つかった。そこを改善し再度作製・評価したところある程度の歩留まりが確認できた。しかしながら、今後より高い(95%以上)歩留まりを達成する必要があり、次年度への課題である。薄膜の厚さを調整することにより可能であるので再度作製を試みる予定である。今年度は、学会発表3回、研究会での発表1回、国際会議での発表2回行い、国際会議では、プロシーディングを提出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定は、超伝導検出器に標的コーン構造を接続、ガンマ線信号を確認することであった。超伝導検出器はある程度の歩留まりは得られて、標的を接続する段階まで来たが、コロナウィルスの影響で出張が難しくなり、研究が中断してしまった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、超伝導検出器単体に標的コーンを装着し、ガンマ線によるエネルギー付与で発生するフォノン信号を検出することを目標とする。また、並行してアレイ化を目指すために多数のコーンを検出器に装着する手法を開発する。そのためには、専用のボンディングマシンの利用が必要である。既に産総研の協力研究者と連絡を取り合い、そのデモンストレーションを行う予定であった。現在の状況が改善し、出張が可能になり次第実施する。また、Re標的も同様に超伝導検出器に装着し、Reのベータ線崩壊信号を検出することを目標とする。国内・国際会議での成果発表および論文出版を目指す。
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