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2019 年度 実績報告書

ハッブル定数,揺らぎの振幅問題から示唆される標準宇宙論の拡張とニュートリノ質量

公募研究

研究領域ニュートリノで拓く素粒子と宇宙
研究課題/領域番号 19H05110
研究機関佐賀大学

研究代表者

高橋 智  佐賀大学, 理工学部, 准教授 (60432960)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワードニュートリノ質量 / ハッブル定数問題 / 揺らぎの振幅問題
研究実績の概要

当該年度は、まずは標準LCDM模型の拡張として、再結合時付近の宇宙膨張、揺らぎの性質を変えるようなモデル(暗黒放射等)と、最近の宇宙の宇宙膨張を変更するモデル(暗黒エネルギーについての拡張等)に分け、どのような拡張が「ハッブル定数問題」を解決しうるのか、様々な角度から検討を行った。
単純に暗黒放射の量を変化させる拡張では、プランク衛星による宇宙背景放射の観測のみだけ考えたとしても、ハッブル定数の値は、誤差は大きくなるものの、通常のLCDM模型の場合とほぼ変わらず、「ハッブル定数問題」を解決するには至らないことは知られていたが、本研究ではさらに「暗黒放射+初期ゆらぎのランニング(スペクトル指数の波数依存性)」、「暗黒放射+ヘリウムの残存量」などの2パラメタによる拡張を考えた。そのような2パラメタの拡張の場合でも、ハッブル定数の値はLCDM模型の場合にプランク衛星から示唆されるものとほぼ同じで、低赤方偏移のハッブル宇宙望遠鏡、強い重力レンズの観測から示唆される値とは矛盾することが分かった。
一方で、低赤方偏移の宇宙膨張を変更するモデルとして、暗黒エネルギーの状態方程式wを w < - 1 とすると、宇宙背景放射から決定されるハッブル定数の値は、ハッブル宇宙望遠鏡、強い重力レンズの観測から示唆される値と矛盾しないことが分かった。しかしながら、バリオン音響振動、超新星爆発のデータも加えて解析をすると、暗黒エネルギーの状態方程式は w=-1 付近が示唆され、結局、複数の観測を合わせると「ハッブル定数問題」は依然として解決できないことも分かった。状態方程式wが時間変化する模型を考えたとしても、その結論はほぼ変わらないことを、状態方程式の幾つかのパラメトリゼーションに関して具体的に解析することで明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度においては、LCDM模型の様々な拡張を考え、どのような模型が「ハッブル定数問題」が解決しうるか、様々な角度から検討を行った。その結果、プランク衛星による宇宙背景放射の揺らぎの観測のみだけ考えた場合に、上記の問題が解決できたとしても、バリオン音響振動や超新星爆発などの他の観測も含めて解析すると、最終的なハッブル定数の値はLCDM模型を仮定した際に宇宙背景放射の観測で決定されるものと(誤差は大きくなるものの)ほぼ同じとなり、上記の問題が解決できないことが分かった。様々なモデルを検討したことにより、今後、どのようなモデルを考えていくべきか、その方針が定まってきており、概ね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

今後は、宇宙膨張の進化をLCDM模型から変化させる現象論的なモデルを考え、「ハッブル定数問題」が解決できるのはどのようなLCDM模型の拡張かを明らかにしていく。その際、様々な観測を合わせて考え、どのような観測の組み合わせでも上記問題が解決できることを具体的な解析で確認し、さらに、「揺らぎの振幅問題」に対しても、矛盾しない結果を与えるか明らかにしていく。そして、そのような模型におけるニュートリノ質量に対する宇宙論観測からの制限を解析し、「ハッブル定数問題」「揺らぎの振幅問題」が示唆するニュートリノ質量について明らかにしていく。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] University of Helsinki(フィンランド)

    • 国名
      フィンランド
    • 外国機関名
      University of Helsinki
  • [国際共同研究] University of Portsmouth(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      University of Portsmouth
  • [雑誌論文] Constraints on decaying dark matter from weak lensing and cluster counts2020

    • 著者名/発表者名
      Enqvist Kari ,Nadathur Seshadri, Sekiguchi Toyokazu, Takahashi Tomo
    • 雑誌名

      Journal of Cosmology and Astroparticle Physics

      巻: 2004 ページ: 015

    • DOI

      10.1088/1475-7516/2020/04/015

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Probing Small Scale Primordial Power Spectrum with 21cm Line Global Signal2020

    • 著者名/発表者名
      Yoshiura Shintaro, Takahash Keitaroi, Takahashi Tomo
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 101 ページ: 083520

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.101.083520

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Towards distinguishing variants of non-minimal inflation2019

    • 著者名/発表者名
      Takahashi Tomo、Tenkanen Tommi
    • 雑誌名

      Journal of Cosmology and Astroparticle Physics

      巻: 1904 ページ: 035~035

    • DOI

      10.1088/1475-7516/2019/04/035

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Insight into primordial magnetic fields from 21-cm line observation with EDGES experiment2019

    • 著者名/発表者名
      Minoda Teppei、Tashiro Hiroyuki、Takahashi Tomo
    • 雑誌名

      Monthly Notices of the Royal Astronomical Society

      巻: 488 ページ: 2001~2005

    • DOI

      10.1093/mnras/stz1860

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Smallest halos in thermal wino dark matter2019

    • 著者名/発表者名
      Ando Shin’ichiro、Kamada Ayuki、Sekiguchi Toyokazu、Takahashi Tomo
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 100 ページ: 123519

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.100.123519

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] A fresh look at H0 tension2020

    • 著者名/発表者名
      Tomo Takahashi
    • 学会等名
      KIAS and NRF-JSPS Workshop on Particle, String and Cosmology
    • 国際学会
  • [学会発表] Probing the Primordial Universe with 21cm line2020

    • 著者名/発表者名
      Tomo Takahashi
    • 学会等名
      International KEK-Cosmo and APCosPA Winter School 2020
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Aspects of non-minimal inflation2019

    • 著者名/発表者名
      Tomo Takahashi
    • 学会等名
      The 3rd NRF-JSPS workshop in particle physics, cosmology, and gravitation
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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