公募研究
2019年度の大きな成果として、CALETによる10TeVまでの陽子スペクトルの発表が挙げられる.本論文は``Editor's Suggestion''として,Physical Review Lettersのハイライトに選ばれている.50 GeVから10 TeVに至る陽子スペクトルを単一の検出器で初めて測定した.得られた結果は,低エネルギー側で磁気スペクトロメータAMS-02の高精度測定と合致し,さらなる高エネルギー側ではTeV領域に至る漸次的なスペクトル硬化を検出した.これは,「宇宙線標準モデル」の予測と食い違う原子核スペクトル「硬化」の起源解明において,伝播効果の役割や近傍加速源の寄与を議論する上で決定的な成果である.データ解析においては,ヘリウムの解析を進めると共に,最大の目的となる,100TeV領域における陽子ヘリウムスペクトルの冪形状を精度よく求めるため,イベント選別の信頼性,飛跡再構成方法の信頼性,モンテカルロモデル依存性,検出器内での相互作用位置の影響など,様々な系統的調査を行った.それと同時に,国際宇宙ステーションにおける長期安定観測を継続してスペクトルの精度を向上させるため,軌道上運用とその効率化を実施した.軌道上CALETの安定運用は,統計が最も重要となる100TeV領域のスペクトルの精度を確保するために必須である.また,本学術領域が主催する研究会に参加し様々な研究に触れ,宇宙線直接観測のコミュニティとは異なる研究者と議論することで,新たな共同研究の種を育むことが出来た.
2: おおむね順調に進展している
CALETは電子観測に最適化されており,エネルギー測定のために検出器内でのハドロン相互作用を必要とする陽子やヘリウムの観測は,電子観測とは異なりよりシミュレーションに対する依存性が強く難しい解析となる.その意味で,CERNでの400GeV陽子ビームを用いたシミュレーションの検証や詳細な系統誤差の評価を含む陽子論文をPhysical Review Letterに出版できたことは,非常に大きな成果と言える.これからはこの成果を礎として,更新されたところのみを集中的に議論することが可能となり,論文化がより効率的に行えるためである.また,ヘリウムの解析も形になり,最大の目的である陽子・ヘリウムの100TeV領域に至るスペクトル測定に関しても予定通り進捗している.軌道上運用も安定に行われており,地上システムの更なる効率化も進んでいる.全体的におおむね順調に進展していると言える.
多様な研究者グループにより組織される本学術領域においては,それぞれの研究者が各々の研究対象の学術水準を向上・強化につながる新たな研究領域となっていると考える.そのような学術領域の研究課題に公募研究として参加することが出来た機会を活かし,さらなる共同研究や研究人材の育成,設備の共用化等の取組を通じて発展できるように努める.
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 15件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 15件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 14件、 招待講演 6件) 備考 (3件)
Physical Review Letters
巻: 122 ページ: 181102 1-8
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https://calet.jp
http://darts.jaxa.jp/astro/calet
https://iss.jaxa.jp/kiboexp/equipment/ef/calet