bcc構造のNbとB2構造のTiNi(TiCo)のミルフィーユ構造を有するNb-TiNi(Nb-TiCo)合金の圧延によるキンク形成とその安定性、およびキンク強化について調べた。 Nb-TiNi合金を30%冷間圧延すると、Nb相とTiNi相のミルフィーユ構造中にキンクが形成することが確認できた。また、この合金の硬度は圧延中に導入された転位の影響により増大した。この合金を所定の温度で1時間熱処理すると、熱処理温度の上昇とともに硬度は低下した。723Kで熱処理した合金の硬度は転位が消滅し圧延前の硬度に回復したが、キンクは残存していた。従って、723Kで熱処理すると、転位を含まずキンクが残存した合金を得られることが分かった。Nb-TiCo合金についても同様の実験を行った。 圧延した合金の降伏強度は、(1)圧延前の強度、(2)転位導入による加工硬化、(3)キンク形成によるキンク強化の和であると仮定したとき、鋳造材、圧延材、熱処理材の強度を比較することで、上記(1)~(3)を定量的に求めることができると考えられる。上記合金の引張試験を行った結果、Nb-TiNi合金におけるキンク強化を定量的に見積もることが可能となった。Nb-TiCo合金に対しても同様の試験を行い、Nb-TiCo合金でもキンク強化を定量的に見積もることができた。Nb-TiCo合金はNb-TiNi合金と比較して延性が低く、転位が運動困難な合金系ではキンク強化の寄与が大きくなることが示唆された。 以上より、NbTiNi(TiCo)合金において、圧延によりキンクが形成すること、キンク形成により合金が強化されることを定量的に実証した。
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