公募研究
本研究では、硬質層と軟質層が積層したミルフィーユ構造を有するMg合金における添加元素の配列を、蛍光X線ホログラフィーによって解析する。従来の蛍光X線ホログラフィーは単結晶試料を必要とするが、測定試料であるMg-Zn-Gd合金は、単結晶化が難しく測定手法の開発が必要である。本年度は、放射光線源が提供するマイクロメータサイズのX線を、多結晶中の結晶粒を狙って照射し、単結晶と同様のホログラムを記録することを試みた。試料の精密な位置調整のための、X線同軸カメラやホログラムを効率的に記録するための二次元検出器など導入し、専用の測定系を構築した。測定試料は、多結晶Mg合金から集束イオンビームによって結晶粒を切り出すことで、準備した。試料の大きさは、50 x 50 x 50μm程度である。この試料を放射光施設SPring-8に持ち込み、マイクロビームX線を利用した蛍光X線ホログラフィー実験を実施した。測定では、ZnのKa線のホログラムを記録した。時間をかけてシグナルを蓄積することで、統計精度としては十分な水準のデータを得ることが出来た。一方で、合金中に存在する第二相や、集束イオンビームで加工した際に付着したと考えられるGaのシグナルが混入しており、データ処理に工夫を要する状況である。現在、混入したシグナルの除去作業を行い、ホログラムパターンの抽出に取り組んでいる。また、次年度からは、光電子ホログラフィーを併用することを検討している。既に、光電子スペクトルは取得済みであり、GdやZnのコアレベルのピークを確認している。
3: やや遅れている
当初は、多結晶であっても結晶粒にマイクロビームX線を照射すれば、問題なくホログラムを観測できると考えていたが、試料中に存在する異相や集束イオンビーム加工時に付着するガリウムのシグナルが混入し、解析をスムーズに進められていない状況である。
今後は、集束イオンビーム加工後に表面クリーニングを施し、ガリウムの影響を除去するとともに、試料を薄く加工することで異相の影響も避けたいと考えている。薄い試料に関しては、既に、テスト測定を行い、異相の影響を避けられる見込みが立っている。また、蛍光X線ホログラフィーだけでなく、光電子ホログラフィーも併用する。光電子ホログラフィーは表面敏感な手法であるため、異相の影響を避けやすい上、微小領域を狙ってホログラムを測定することも可能である。表面酸化の影響について検討する必要があるが、光電子スペクトルが取得できることは確認しており次年度にはホログラム測定を実施できる見込みである。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Physical Review B
巻: 101 ページ: 024302-1 - 10
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.101.024302
http://structure.web.nitech.ac.jp/