研究領域 | ミルフィーユ構造の材料科学-新強化原理に基づく次世代構造材料の創製- |
研究課題/領域番号 |
19H05128
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
多根 正和 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (80379099)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 弾性論 / マイクロメカニックス / 材料組織 |
研究実績の概要 |
材料の弾性率は、原子間ポテンシャルの2 階微分に相当することから、結晶構造および原子の結合状態を直接的に反映した物性値である。ここで、本新学術領域で対象とするミルフィーユ構造は、強い原子間結合からなる硬質層と弱い結合からなる軟質層で構成された層状構造である。このため、ミルフィーユ構造には、硬質・軟質層間の原子間結合の不均質性に起因した弾性不均質性が発現すると考えられる。MAX相セラミックスはMX原子の層とA原子の層が交互に積層している層状の結晶構造のため、原子レベルのミルフィーユ構造とみなすことが可能な結晶構造を有している。ここでMは遷移金属元素、AはAグループ元素、XはCもしくはNで構成されている。本年度は、Ti3SiC2 MAX相に着目し、その弾性特性に対して研究を行った。まず、磁場中スリップキャストおよび放電プラズマ焼結を用いて配向Ti3SiC2焼結体の多結晶試料を作製した。作製した配向Ti3SiC2多結晶に対して、X線極点図を用いたTi3SiC2結晶のc軸の配向性の解析を行った。さらに、配向Ti3SiC2多結晶に対して、超音波共鳴法と電磁超音波共鳴法を組み合わせた手法により全ての独立な弾性スティフネスを測定した。次に、測定によって得られた配向Ti3SiC2多結晶の弾性スティフネスとX線極点図の情報から、独自の単結晶弾性率決定手法であるinverse Voigt-Reuss-Hill近似を用いて、Ti3SiC2単結晶の弾性率を決定した。さらに、得られたTi3SiC2単結晶の弾性スティフネスを用いてa軸方向に平行な方向のヤング率とc軸方向に平行な方向のヤング率を計算した。その結果、Ti3SiC2単結晶は結晶構造に強い異方性を有するにも関わらず、ヤング率は等方的な挙動を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原子レベルのミルフィーユ構造を有するTi3SiC2 MAX相に着目し、磁場中スリップキャストおよび放電プラズマ焼結を用いて配向Ti3SiC2焼結体の多結晶試料を作製した。配向Ti3SiC2多結晶試料に対する測定によって得られた弾性スティフネスとX線極点図の情報から、独自の単結晶弾性率決定手法であるinverse Voigt-Reuss-Hill近似を用いて、大きな単結晶を育成することが極めて困難なTi3SiC2単結晶の弾性率を測定することに成功した。これにより、原子レベルのミルフィーユ構造を有するTi3SiC2 MAX相の単結晶の弾性特性を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
新学術領域内での連携研究を利用して、第一原理計算を用いたTi3SiC2系MAX相セラミックスの硬質層と軟質層の弾性不均質性の解析を行う。具体的には、Ti3SiC2系等のMAX相セラミックス単結晶に対して、力学負荷を加えて、硬質層と軟質層におけるミクロな弾性変形を評価する。これによって、MAX相セラミックスにおける硬質層と軟質層の弾性不均質性とその弾性異方性との相関関係を明らかにする。さらには、第一原理計算を用いて、Ti3SiC2系等のMAX相セラミックスに対する電子状態の解析を行い、電子論的な観点から弾性不均質性の支配因子を明らかにする。加えて、Mg合金を対象とした弾性特性の研究を実施する。
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