MgZnY合金の非常に優れた機械的特性は,LPSO相が形成加工によってキンク変形することにより発現することが明らかにされている。従って,キンク変形がどのように発生するかを調べることは非常に重要である。そこで筆者等は,応力に対する組織構造の応答を明らかにするため,放射光実験に利用可能な小型圧縮試験機を開発し,一方向凝固により大きなグレインを持つ18R単相シンクロ型LPSO合金Mg85Zn6Y9試験片(サイズ0.3 mm× 0.3 mm×1 mm)を圧縮しながら,放射光白色マイクロビームでラウエ回折パターンをマッピングした。そして,その差分を可視化することにより,グレイン境界像の変化を得ることに成功した。しかし,この方法は1方向からの投影像しか測定出来ないため,キンク発生箇所の深さ方向の情報が得られないという問題があった。そこで,本研究では直交する2方向からの投影像を測定できるよう小型圧縮試験機を改造し,キンク発生箇所を3次元的に可視化することを試みた結果,圧縮応力下で直交する2方向からのグレイン境界像の変化を観察することに成功した。得られた2方向からのグレイン境界像から,次のことが分かった。1)降伏応力(~150 MPa)より低い120MPa程度の応力でグレイン変形が始まっている。2)複数のグレインの内,1つのグレインから変形が始まり,他のグレインには伝わりにくい。3)<11-20>配向からの僅かなずれが変形の開始に影響している可能性がある。
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