研究実績の概要 |
対相関は原子核における最も重要な相関の一つであり、その構造や集団ダイナミクスに強い影響を及ぼす。このような例のうち、巨大対振動(GPV)は、対相関が引き起こす全く新しいタイプの巨大共鳴状態として、約40年に渡って理論的に着目されてきた。しかし、これまで実験的な情報は皆無に等しく、特に中重核での発見・確定が望まれている。本研究の目的は、新反応プローブ「(4He,6He)反応」を活用し、超流動状態の原子核として知られているSn安定同位体でGPVの存在を確定することである。最終年度である本年度の研究実績は以下のとおりである。 (1) 120Sn標的に対する(4He,6He)反応データの解析 東北大CYRICにて取得した120Sn標的に対する(4He,6He)反応のデータの解析を行った。解析の結果、118Snの励起エネルギー13MeV付近に従来の(p,t)反応では見えていなかったピークを観測することに成功した。 (2) 実験データと理論計算との比較 Hartree-Fock-Bogoliubov+準粒子乱雑位相近似(HFB+QRPA)による最新の理論計算によると118SnのGPVは約13MeVに予測されており、(1)で観測されたピークの位置と一致した。さらに、歪曲波ボルン近似により反応の角度分布を計算し、実験で得られた分布と比較した結果、誤差の範囲内でよく一致した。これらの結果から、観測されたピークはGPVの有力な候補といえる。 以上の結果から、(4He,6He)反応によるGPV探索の手法を確立した。今後他のSn同位体に対しても同様の測定を行い、GPVの未知の性質を明らかにしていく。本研究はその系統的研究への重要なステップといえる。
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