この研究計画により、原子核における、中生子数の増加による殻構造の進化の研究が大きく進展した。原子核が変わっても、殻構造は基本的には変わらないという旧来の考え方に対して、核力の効果によって殻構造が変わり、旧来の魔法数が消滅したり、新たな魔法数が現れることさえ起こる、という殻進化の理論を提唱し、推進してきた。その進展に本研究計画は大きく貢献してきた。その成果は2021年10月に松江で開催されたスピン国際会議での講演や、同年に韓国に対して3回にわたってリモートで行われた講義などで発信された。論文としても、それまでの成果に新たな知見を加えたレビュー論文を Reviews of Modern Physics 誌に出版した。この論文は2020年の出版であるが、インパクトは大きく、すでに216回引用されている。さらに、軽いニッケル原子核における変形共存現象が殻進化と関係していること示した。その論文は Physical Review Letters 誌などに掲載され、18回引用されている。さらに殻進化と中性子ドリップラインの関係を論じ、ドリップライン決定の新たなメカニズムを第一原理的な相互作用から解明する研究を行った。この成果は Nature 誌に掲載され、今日までに38回引用されるなど、国際的に大きなインパクトを与えている。このように、テンソル力をはじめとする核力の効果を解明して、殻構造がdのように変化し、それが原子核の形の変化や、存在限界にいかにかかわるかを明らかにしてきた。 以上の研究に並行して、原子核内部のアルファクラスター形成を第一原理計算により解明し、例えば炭素ー12原子核のホイル状態の内部構造を解明する研究を推進した。論文投稿の作業を進めた。
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