研究領域 | ハイエントロピー合金:元素の多様性と不均一性に基づく新しい材料の学理 |
研究課題/領域番号 |
19H05170
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北川 宏 京都大学, 理学研究科, 教授 (90234244)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ナノ固溶合金 / 多元素高エントロピー / ナノ材料 |
研究実績の概要 |
白金族から構成されるRuRhPdIrPt合金や全白金族元素を含んだRuRhPdOsIrPt合金ナノ粒子の合成に成功し、任意の金属組成で合成することが可能となった。走査型透過電子顕微鏡(STEM)-エネルギー分散型X線分光(EDS)による元素マップから5、6元系共に全元素が各粒子内に存在することが確認された。また電極触媒として5元系合金は燃料電池の半反応である水素発生反応(HER)において、酸性、アルカリ性の両条件において高活性を示すPt触媒より高活性を示すことが分かった。また6元系白金族ナノ合金は12電子反応であるエタノール酸化反応ではアルカリ溶液中で高活性を示すことが分かった。アルカリ溶液中のエタノール酸化反応はPdが高活性であることが知られているが、通常Pdでは直接12電子反応は進行せず酢酸を生じる4電子反応が主であり副反応で生じるCOにより被毒するため触媒活性は劣化する。これまで直接12電子反応を示すものは2019年Journal of the American Chemical Society誌に発表されたAuコアPtIrシェル合金触媒のみである。6元系白金族ナノ合金は極めて高い安定性を示すだけでなく、先述の合金触媒より低い過電圧で記録的な高活性を示し直接12電子反応が高効率で進行していることが示唆された。触媒反応は固体表面で分子が吸着することにより生じるため多様な吸着サイトを持つHEAナノ粒子では通常被毒などの影響で劣化する反応や多種の分子・中間体・電子・プロトンを必要とする反応機構において高活性を示すのではないかと考えた。特に白金族元素はそれぞれが種々の反応において有用な触媒であるためそれら全てを混合した白金族高エントロピー合金ナノ粒子は電極触媒として単金属や2,3元系合金では達成され難い多様な反応において高い活性を示す可能性があるのではないかと考えられる。その他の成果として、ハイエントロピーナノ合金としては最初のレビュー論文等数報の論文を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況 区分(順調に進捗)と理由:元系白金族ナノ合金は12電子反応であるエタノール酸化反応にアルカリ溶液において高い活性を示すことなど、期待以上の発見があったから。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策: 白金族元素元素を用いて、任意の金属組成で5元系および6元系の高エントロピーナノ合金の作製に成功した。得られたナノ合金は種々の電極触媒反応において従来の単金属ナノ粒子触媒を上回る活性を示すことが分かった。次年度は白金族以外の元素も含む高エントロピー合金を開発しつつ、その他触媒用途への応用等検討を行う。
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