研究実績の概要 |
CrCoNi三元系,およびMnFeCoNi四元系合金に引き続き,他の三元系,四元系合金の単結晶の作製を行った.一方,弾性率測定については,液体ヘリウムの入手難によって,全ての結晶が揃った時点で測定を行うこととしたため,まだ弾性率測定は行えていない.現在,新たに単結晶の作製が完了した系は,三元系ではFeCoNi, MnFeNi, MnCoNiであり,四元系ではCrFeCoNiである.したがって,残りのfcc単結晶の作製が可能と考えられている三元系CrFeNiと四元系のMnCrCoNiの単結晶の作製が終了次第,全ての合金についての弾性率の測定を行う予定である. 弾性率の温度依存性を議論するにあたり,弾性率測定中の構造の安定性について疑義が生じたため,熱処理に伴う結晶の内部構造の安定性について電気抵抗測定によって調査した.その結果,CrCoNiミディアムエントロピー合金では600℃以下の熱処理において,CrMnFeCoNiハイエントロピー合金では700℃以下の熱処理において,熱処理温度の低下とともに顕著な電気抵抗の増加が起こることが明らかとなった.また,熱処理温度を変化させた時の電気抵抗の変化速度から見積もられた,反応の活性化エネルギーはいずれも200kJ/mol程度であり,拡散の活性化エネルギーより小さいものであった.さらに,焼き入れた試料の電気抵抗変化が見られなかった温度域での反応速度を見積もると0.1s以下のオーダーとなり,単に焼入れ時に熱処理時の熱平衡状態を保存することができていないだけと見ることができた.
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