研究実績の概要 |
ミディアムエントロピー合金であると共に現状において室温で作動する最も水素吸蔵量の大きい材料であるTi-V-X系BCC固溶体水素吸蔵合金を創成しそれを発展させた経験を踏まえて、四元素系のハイエントロピー水素吸蔵合金Ti-V-Cr-Xを作成した。第四元素としてMn, Zr, Nb, Mo, Fe, Co, Ni, Alを選択し、これらの一つにTi, V, Crを加えた四元素を等モル含む合金を作成した。合成した合金の内、TiVCrMn, TiVNbCr, TiVCrNi, TiVCrMo, TiVCrAl および五元素を等モル含むTiVCrNbMoは、X線回折測定によりBCC単相であることを確認した。また、複数の相を含むTiVCrZr, TiVCrFe, TiVCrCo合金においても主相はBCC相であった。従って、これらの混相の合金においても等モルから僅かにずれた組成に調整することや等モル組成のままで熱処理などの操作によってBCC単相を得ることができる可能性がある。水素雰囲気下DSC測定により作成したBCC合金の水素吸蔵特性のスクリーニング評価を行ったところ、ほとんどの合金が容易に水素を吸蔵および放出することを確認した。 一般にハイエントロピー合金は固溶体を言う場合が多く本研究でもBCC固溶体水素吸蔵合金を対象としているが、AB2組成を有する金属間化合物であるLaves相合金もBCC相と共に水素吸蔵性に優れている。そこで、ハイエントロピー合金からMulti-Principal element 合金へと水素吸蔵合金の開発の展開を目的にAB2組成を目標組成として、軽量なTiを主成分とする二つのA元素と遷移金属四元素を等モル含むB元素による六元素を等モル含む合金を12種作成した。
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