研究領域 | ハイエントロピー合金:元素の多様性と不均一性に基づく新しい材料の学理 |
研究課題/領域番号 |
19H05178
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
宮本 博之 同志社大学, 理工学部, 教授 (10298698)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ハイエントロピー合金 / 強ひずみ加工 / 超微細結晶材料 / ナノ結晶材料 |
研究実績の概要 |
ステンレス鋼の耐孔食性指標として用いられる孔食指数(PRN=Cr+3Mo+14N)から推定すると、代表的なHEAであるCantor合金(CoCrFeNiMn合金)は不働態形成元素であるCrを約20at%程度含有するため、汎用ステンレス鋼と同等またはそれ以上の優れた耐食性が期待できる。例えば、オーステナイト系ステンレス鋼の代表であるSUS304鋼(18Cr-8Ni)以上の耐孔食性が期待できるはずであるが、Cr含有量に相応した耐食性を示しているとは言えない。その原因としてはCrのHEA合金の作製の難しさに起因する濃度偏析、第二相の析出、Crに代わる他の元素の表面濃化が考えられるが、その原因は十分解明されていない。本研究では代表的なHEAであるCoCrFeNiMn合金に対して、強ひずみ加工の一つであるHPT法を10回転行なって結晶粒を超微細化させて、その耐食性への影響を調べた。耐食性の評価は塩化ナトリウム溶液中のアノード分極曲線により行なった。その結果、超微細結晶材は加工前の粗粒材と比べて不動態保持電流および孔食電位に差は認められなかった。一方、Crが0および6%の場合、HPT加工の有無に関わらず不動態化が分極曲線により確認された。Fe-Cr合金では明確な不動態が認められるのは10.5%以上とされる。このことから、Cr以外の合金元素が不動態形成に関与したことが示唆される。また、結晶粒微細化の効果が認めれらなかったことに関しては、集合組織などHPT特有の組織か、第二相の存在、低い拡散性など種々の可能性が考えらるが、今年度明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
均質組織を有するハイエントロピー合金の作成の難しさから、腐食試験への評価が遅れた。また、新型コロナウィルス(COVID19)の蔓延により大学が封鎖された影響も大きい。
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今後の研究の推進方策 |
当初に期待していた結晶粒超微細化の耐食性に及ぼす効果が確認できなかったことと、結晶粒径に関わらずCrが10%以下においても不動態化が分極曲線上に現れたことに焦点をしぼり研究を行なう。前者については、第二相の有無や濃度分布の均質性が耐食性を阻害している可能性がある。組織の不均一性に依存しない不動態被膜の平均的な安定性を評価方法を考えたうえで行なう。
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