研究領域 | ハイエントロピー合金:元素の多様性と不均一性に基づく新しい材料の学理 |
研究課題/領域番号 |
19H05180
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
Stefanus Harjo 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究主幹 (40391263)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中性子回折 / ハイエントロピー合金 / 高温 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ナノ・ミクロ組織ハイエントロピー合金の高温・応力負荷外場環境下でのその場中性子回折による結晶構造測定を行い、高温特性を制御する根本的なメカニズムを明らかにすることである。ハイエントロピー合金は、1つの主要な元素に基づいている従来の合金と違って、複数の主成分状態図の中央付近の化学組成を持ち、高温での高いエントロピーと構成原子の遅い拡散の結果、高温で優れた機械的性能を示す。さらに、ハイエントロピー合金を含む金属材料はナノ・ミクロ組織を制御することによって、同一の化学組成でも幅広く特性を変化させることができる。しかし、高温特性を制御する根本的なメカニズムは、合金組成上の複雑さ及び元素間の相互作用のために依然として未知であったため、ハイエントロピーのナノ・ミクロ組織と高温特性の関係を明らかにし、実用化のための特性発現メカニズムや組織形成の理解と最適な材料創製設計への指針の獲得を試みた。 加熱試験及び高温下での変形中のその場中性子回折実験を行うための試験機の整備を行った。その後、その試験機を用いて結晶粒サイズが大きなCoCrFeNiハイエントロピー合金を対象として、1273Kまで加熱中のその場中性子回折実験を行い、結晶学的ミクロ組織情報(結晶構造安定性・変化、元素分配、結晶粒間及び相間の応力、集合組織、転位及び結晶子サイズ等)を獲得し、試験片バルクの熱膨張の変化と比較して、高温での相安定性を調べた。加熱中または高温保持中にFCC構造で非常に安定していたが、加熱中のバルク熱膨張との差が大きかった。上記の研究と並行して、CoCrFeMnNi合金の低温での優れた機械特性の発現機構の解明も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、加熱及び高温下での変形中のその場中性子回折実験が重要な手段である。本実験で必要な高温変形試験機は調整中に不具合を見つけたが、修理が完了した。その高温変形試験機を用いて結晶粒サイズが大きなCoCrFeNiハイエントロピー合金を対象として、1273Kまで加熱中のその場中性子回折実験を行い、結晶学的ミクロ組織情報と試験片バルクの熱膨張の変化との比較を行うことで、高温での相安定性を調べることができた。また、比較のために行われたCoCrFeMnNi合金の低温における機械特性発現機構の解明に関しては論文発表ができた。
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今後の研究の推進方策 |
結晶粒サイズが大きなCoCrFeNiハイエントロピー合金を用いた研究の一部を継続しながら、加工と熱処理で創製した異なる結晶粒サイズのCoCrFeNiハイエントロピー合金及びBCC系のHfMoNbTaTiハイエントロピー合金を研究対象として加える。加熱及び高温変形中のその場中性子回折実験は、日本原子力研究開発機構(JAEA)がJ-PARCに設置したパルス中性子回折実験装置(匠実験装置)を用いる。なお、研究代表者は、匠実験装置の装置責任者であり、柔軟にビームタイムの確保・立案が可能である。その場中性子回折実験で得られた中性子回折パターンを研究代表者・ハルヨ及び研究協力者・ゴン ウーが熟知した解析技術を駆使して結晶学的ミクロ組織情報を定量化し、外場環境の条件に対して整理を行う。また、高温変形特性との比較のためにCoCrFeNiの合金の低温における機械特性発現機構の解明も行う。
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