研究領域 | 宇宙観測検出器と量子ビームの出会い。新たな応用への架け橋。 |
研究課題/領域番号 |
19H05184
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木村 智樹 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (50578804)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 氷衛星 / 表層 / 宇宙風化 / 内部海 / プラズマ / ミュオン分析 |
研究実績の概要 |
<照射実験>:代表者が使用実績のある、若狭湾エネルギー研究センター等のプラズマ照射装置を用いて、現状で実現可能な短期の宇宙風化の再現実験を行う予定であったが、本年度前期に同装置が故障してしまい、同装置を用いた予備実験が不可能になった。
そこで、本年度は、以前より継続していた長期専有可能な独自の大強度プラズマ照射装置の開発を加速させた。過去の遠隔観測から、氷衛星表層の主成分と示唆されている硫酸塩水和物や水で構成される試料を、氷衛星の温度環境80-100Kまで冷却し、木星プラズマの主成分である数10keVの電子や酸素イオンを、最高1e+18/cm2以上の総量で照射する仕様である。これは、氷衛星表層における億年スケールの宇宙風化に相当する。本年度は、試料冷却のための低温チャンバと大強度電子銃を完成させることができた。2年度目は、性能試験実施後に、大強度照射の本実験を行い、試料の反射スペクトルがもつ傾き等の特徴量を、照射総量の関数として定量化していく予定である。
<ミュオン分析の検討>:負ミュオンを用いた試料分析のための検討を行った。代表者の今までの予備実験で行った、硫酸塩への酸素イオン照射により試料表層に新たに生成された物質を考察し、S8硫黄や亜硫酸塩を仮説として提案した。特にS8硫黄は、実験で確認された試料の紫外-可視反射スペクトルの特性を良く説明できる可能性がある。研究協力者の髭本亘博士(日本原子力研究開発機構 )や、当該領域のB01班(代表:二宮和彦博士(大阪大学))と共に、負ミュオンを用いた、S8硫黄や亜硫酸塩の検出可能性を引き続き議論している。今後、負ミュオン分析を用いて、サンプル表層におけるそれらの物質の存在量等を評価していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた、既存装置の照射実験が、装置故障のために実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究期間中において、予備実験に用いる装置(若狭湾エネルギー研究センター)の修繕の見通しが立たないため、長期専有可能な独自の大強度照射装置の開発に主要なエフォートを振り分ける。これにより、可及的速やかに大強度照射の本実験を実現する。研究目的である氷衛星表層の億年スケールのプラズマ宇宙風化を再現し、内部海物質の表出年代を導出し、内部海の深さや発生年代の制約を試みる。また、負ミュオンによる試料分析を、2年度目に実施するため、ビームタイム申請や分析手法の検討を継続する。これにより、負ミュオン分析を用いて宇宙風化による表層反射スペクトルの変化をもたらす化合物質種類を同定し、宇宙風化の特長付けの定量化・効率化を試みる。
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