研究領域 | 宇宙観測検出器と量子ビームの出会い。新たな応用への架け橋。 |
研究課題/領域番号 |
19H05196
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
水間 広 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (00382200)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生体イメージング / 中枢リンパ系 / SPECT / 脳神経疾患 / 脳腫瘍 |
研究実績の概要 |
長年、中枢神経系には形成されていないと言われていたリンパ管が、蛍光イメージング技術により近年発見され、構造的および機能的な役割が明らかになってきている。しかしながら、この脳組織-リンパ管体系での体内物質および細胞の時空間的変化を個体で捉えるには生体深部からのシグナルを検出する必要があるため、可視光よりも組織透過力の高いガンマ線放出核種を用いた単一光子放射断層撮影法(SPECT)によるイメージングが有効である。本研究では、宇宙観測研究から開発されたガンマ線検出技術をベースとするテルル化カドミウム(CdTe)半導体検出器を持つ高性能SPECT装置を用いて、中枢神経系リンパ管の「真」の循環動態イメージング法の開発に着手する。本研究結果から、脳神経疾患や腫瘍に対する新たな診断技術の創出および治療戦略モデルの構築を目指す。 まず、最初の基礎研究段階として、マウスの中枢性リンパ管のイメージングを行い、正常マウスに限らず神経炎症および脳腫瘍などの病態モデル動物に適用することで、中枢リンパ管内を循環する免疫細胞の遊走性や脳組織内に細胞活動により蓄積した老廃物の除去について可視化・定量化する。本法実現のために、1)インジウム-111(In-111)、テクネシウム-99m(Tc-99m)などのガンマ線放出核種標識トレーサー(SPECTトレーサー)の開発、2)髄腔内投与方法の検討、3)SPECT撮像法の最適化、および4)画像データの数理的定量解析方法の各検討課題を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では最初に正常マウスでの中枢性リンパ管のイメージングに着手した。最初に、SPECTトレーサーの開発として、、高分子化合物であるデンドリマーにDTPA錯体を形成し、SPECT撮影用のガンマ線放出核種であるインジウム111(In-111)を標識した([In-111]DTPA-デンドリマー)。標識された[In-111]DTPA-デンドリマーをマウス髄腔内投与用に遠心濃縮し、放射活性濃度を1 MBq/1μLまで高濃度化に成功し、高比放射能(100 GBq/μmol以上)・高放射化学純度(95%以上)を達成した。次に髄腔内投与方法の検討として、従来の投与カテーテルよりも高精密なSPECT撮影用に非金属製の髄腔内投与針(外径0.2 mm, 内径0.1 mm)を新たに作製し、[In-111]DTPA-デンドリマー投与によるマウス髄腔内撮像に世界で初めて成功した。
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今後の研究の推進方策 |
SPECT撮像法の最適化として生体イメージングは通常、麻酔下で行われるが、本研究ではリンパ管内は睡眠と覚醒での循環動態が異なることが考えられるため、麻酔を施さない覚醒下での実験を遂行するために高性能SPECT装置に特化した撮影用固定台をカスタマイズした。本撮像法を今後、正常マウスならびに神経炎症および脳腫瘍などの病態モデルマウスに対して撮像を行う予定である。
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