研究領域 | 宇宙観測検出器と量子ビームの出会い。新たな応用への架け橋。 |
研究課題/領域番号 |
19H05197
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
梅田 泉 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (40160791)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 核医学イメージング / 空間分解能 / SPECT / 小動物イメージング / リポソーム |
研究実績の概要 |
本研究の最終目的は、従来にない、超精密空間分解能でのin vivo 核医学イメージング手法の確立である。計画研究C01班で開発中の宇宙観測研究から生まれた新しいイメージング装置は空間分解能およびエネルギー分解能に優れ、従来にない画期的な核医学分子イメージング装置となり得る可能性をもつ。そのためには、装置特性を最大限に活かすことの出来る分子プローブの開発が必須である。2019年度は、まず計画研究C01班と共同で、開発中装置の性能評価およびその性能を活かすために必要なプローブ側の条件検討を実施した。計画研究班が開発した小動物SPECT装置プロトタイプは、ファントム実験で従来にない高い空間分解能(<250μm)を示した。また、エネルギー分解能も極めて良好で、この性質を利用しての多核種同時測定も可能となった。一方測定感度はこの条件下では0.05%であった。測定感度と空間分解能はトレードオフの関係にあり、この感度は従来装置の1/3-1/4程度に留まった。このことよりインビボイメージングで高分解能の良好な画像を得るためには、分子プローブの放射能濃度を従来の5-10倍以上高める必要のあることが示された。 これを可能にする高放射能濃度分子プローブの調製を目指し、薬物送達システムのキャリアであるリポソーム に高濃度に放射性核種を封入するための諸条件を検討した。検討の結果、In-111およびTc-99mを従来の約10倍の濃度で封入することに成功した。また、リポソームの脂質膜と内水層をIn-111とTc-99mで別々に標識する手法についても検討を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画研究C01班との共同研究により、開発中装置の分子イメージング装置としての性能を従来装置と比較する形で把握することができた。その結果に基づき、開発装置の特性を活かすために必要なプローブ側の条件(放射能濃度など)を求めることができ、それを満たすプローブの調製にも成功した。本プローブと開発装置との組合せにより、目的とする高空間分解能イメージが可能と考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は装置性能を評価し、その性能を活かすプローブ調製を可能にした。これらの成果を土台として、今後は以下の検討を予定する。 1. 担がんマウスモデルを用いたin vivo イメージング: 従来装置との比較も加え、得られる画像を評価する。腫瘍を摘出し、ex vivoイメージングも実施すると共に、薄切切片を作成してオートラジオグラフィと病理学的検討などを加える。腫瘍内精密分布可視化について検討する。 2. タングステン平行コリメータ装着二次元イメージャーの最適化: 計画研究C01班が新たに開発を進めるタングステン平行コリメータ装着二次元イメージャーにつき、これをより広範に活用するための必要条件や、それを可能にするプローブの条件を検討する。空間分解能は高くなくても比較的広い視野で体内分布の比較や経時的変化を追う場合に有用と予想され、目的に応じての撮像方法の選択肢が拡がると期待される。 3. 多核種同時イメージングの検討: 計画研究C01班のCdTe半導体イメージャーは、エネルギー分解能にも優れ、原理的には複数核種同時測定が可能と考えられる。複数のイベント を同時に可視化し、経時的な変化を観察できることは、in vivoイメージングにとって大きな利点となる。
|