公募研究
過剰な攻撃性(暴力)は、人間の生命や精神的健康を脅かす大きな社会問題である。臨床場面においても、自閉症、統合失調症、アルツハイマー型認知症など、様々な精神疾患の症状の1つに攻撃性があり、その生物学的基盤を理解することが早急に求められている。本研究は、過剰な攻撃行動に関わる神経回路を同定するとともに、その神経回路が社会的ストレスによってどのような変容が生ずるかを、マルチスケールな観点から明らかにすることを目的とする。申請者のこれまでの研究から、背側縫線核(DRN)へのグルタミン酸入力が雄マウスの攻撃行動に関与することが明らかとなった。in vivoマイクロダイアリシス解析から、雄マウスが攻撃している最中に、DRN内のグルタミン酸の放出は増加することが示された。特に、雄マウスが過剰な攻撃行動を示している最中に、DRNグルタミン酸の入力は高い増加を示した。また、DRNへグルタミン酸を局所投与することで、雄マウスの攻撃行動は増加した。この結果から、DRNへの興奮性入力は、過剰な攻撃行動を誘発する神経メカニズムであることが明らかになった。DRNへの興奮性の入力は様々な脳領域から行われているが、特に、前頭前野、視床下部、そして手綱核からはDRNに向けて密度の高い興奮性の投射が存在する。とくに外側手綱核(LHb)は、不快情動に関わる神経核であり、DRNに対して直接興奮性入力を行うとともに、吻側内側被蓋核を介して抑制性の入力を行っている。本研究では、光遺伝学的手法や薬理遺伝学的手法を用いてLHb-DRN投射ニューロンが過剰な攻撃性にどのように関与するかを検討する。
2: おおむね順調に進展している
LHb-DRN投射ニューロンの光遺伝学的操作実験と、薬理遺伝学的操作実験から、この投射の活性を変化させたときに、攻撃行動に影響が出ることが明らかとなってきた。攻撃行動中のLHb-DRN投射ニューロンの神経活動記録を行うために、ファイバーフォトメトリー実験を開始し、現在も解析を進めているところである。
1)引き続きファイバーフォトメトリー実験により、LHb-DRN投射ニューロンの神経活動記録を進める。2)ストレス負荷によって、攻撃行動がどのように変化し、LHb-DRN投射ニューロンの神経活動そして遺伝子発現がどのように変化するかを調べる。
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Nature Neuroscience
巻: - ページ: -
https://doi.org/10.1038/s41593-020-0617-7
https://trios.tsukuba.ac.jp/researcher/0000003646
https://sites.google.com/view/akitakahashi-tsukuba/home