研究実績の概要 |
本研究は、単一遺伝子異常で発達障害の症状をきたす症候群を対象に、マウスを動物モデルに使って、タンパク質の量的制御、細胞内局在・動態の情報を網羅的に収集することを目的としている。2019年度は、生体脳内ゲノム編集・分子イメージング技術であるSLENDR法およびvSLENDR法 (Mikuni et al., Cell 2016; Nishiyama*, Mikuni* et al., Neuron 2017) を駆使して、マウスの大脳皮質において疾患モデルとコントロール細胞をモザイク状に作り出し、内在性タンパク質の発現量、細胞内局在・動態をイメージングする方法の開発を目指した。この方法の開発により、疾患モデルとコントロール細胞を、同一組織の同じ条件下で解析できるようになる。このような技術開発を実現するために、まず、(1)単一遺伝子異常で発達障害の症状をきたす症候群としてレット症候群に着目し、その原因遺伝子であるMeCP2をCRISPR-Cas9による生体脳内ゲノム編集でモザイク状にノックアウトすることに成功した。そのうえで、(2)主にシナプス機能に関わる代表的なタンパク質20種類以上について、SLENDR法およびvSLENDR法で目的分子を高感度かつ選択的に標識するためのゲノム編集プラットフォームを構築し、このプラットフォームと2光子顕微鏡を用いて、大脳皮質において実際に分子イメージングを行えることを確認した。2019年度のこれらの成果により、今後、マウスの生体脳内で作製した病態モデル細胞において、様々な重要タンパク質の動態をモニターすることが期待できる。
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