公募研究
脳は、分子・細胞・神経回路・脳・個体にいたる階層性を持つ大規模で複雑なシステムであり、その機能解明のためには脳システムの全体像を捉える必要がある。脳科学において細胞内シグナル伝達機構を分子レベルで解明することは、脳機能の理解だけでなく、精神神経疾患の病因や病態の解明、治療法の開発に非常に重要である。しかしながら、脳神経系は部位毎に機能や、構成する細胞、制御する神経伝達物質が異なっており、精神神経疾患の病態解明のためには、脳部位ごとの細胞内シグナルを解析する必要がある。本研究では、向精神薬が脳内で引き起こすリン酸化シグナルを脳領域および細胞種毎に包括的に解析し、その薬理作用を明らかにする。並行して、リン酸化シグナルを脳内において観察・操作するための手法の開発を行う。最終的には、疾患モデルマウスのリン酸化シグナルを観察・操作することで、行動や症状の変化・改善を評価する。臨床で主に使用されている統合失調症治療薬(ドーパミンD2受容体拮抗薬、部分作動薬)から、ハロペリドール、リスペリドン、アリピプラゾール、オランザピン、クロザピンの5種類を選定した。抗精神病薬5種類の投与を行ったマウスの線条体から脳ライセートを作製し、リン酸化シグナルの解析を行った。アルツハイマー型認知症治療薬(コリンエステラーゼ阻害薬)からドネペジルを選定した。ドネペジル投与を行ったマウスから脳ライセートを作製し、側坐核や海馬においてM1R-Gq-PKC-bPIX(Rac GEF)-Rac-PAKシグナルが活性化することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
リン酸化シグナルの解析は順調に進行している。
リン酸化シグナルと行動との関係を解析する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Current Opinion in Cell Biology
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