研究領域 | マルチスケール精神病態の構成的理解 |
研究課題/領域番号 |
19H05222
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
宋 文杰 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (90216573)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 聴覚 / 大脳基底核 |
研究実績の概要 |
私たちは聴覚皮質の研究を進めてきており、最近、マウスにおいて、淡蒼球外節部(GPe)GABAニューロンが直接聴覚皮質と聴覚視床に投射することを見出した。この新らしい回路(GPe-聴覚系回路)は、1)大脳基底核の出力核でないGPeからの直接出力、2)聴覚視床と聴覚皮質の非毛帯系部位に対する強い入力、3)大脳基底核ドーパミン系と聴覚皮質を関連づける、という三つの意味において興味深い回路と考えており、その機能および精神疾患との関連を追及している。本年度では、まず、聴覚におけるGPe-聴覚系回路の機能を光遺伝学と電気生理学を組み合わせた方法を用いて検討した。結果、聴覚系に投射するGPeGABAニューロンを選択的に活動させると、多くの大脳皮質ニューロンの聴覚応答は抑制されたが、一部のニューロンの活動は増強された。オッドボール課題を実施した結果、GPe-聴覚系回路が聴覚皮質ニューロンの刺激変化検出能を有意に亢進させることが明らかとなった。また、光遺伝学的にGPeGABAニューロンを選択的に抑制させると、大脳皮質ニューロンの活動が増強する知見も得ており、聴覚系に投射するGPeGABAニューロンも、従来報告されているGPeニューロンのように自発的に活動していると考えられる。従って、GPeGABAニューロンは活動レベルを上下させることによって、聴覚系の刺激変化検出能を調節していると考えられる(現在、論文を準備中)。一方、GPe-聴覚系回路と幻聴との関係を探索するために、まず、ドーパミンD2アゴニスト投与が聴覚応答に対する影響を調べた。結果、ニューロンによって、増強させる場合と減弱させる場合が見られた。これらの影響にGPe-聴覚系回路がどのように寄与するかを現在調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究によって、GPe-聴覚系回路の機能の一端を明らかに出来たため、研究がおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
GPe-聴覚系回路と幻聴の関係を中心に研究を進める。動物における幻聴の評価は極めて困難であるが、音声記録と神経活動記録を同時に行い、音声に対応しない聴覚野の活動を幻聴に対応する活動と捉え、野生型動物と統合失調症モデル動物を用いて比較検討し、幻聴の神経基盤を探索する。特に、GPe-聴覚系回路を選択的に抑制させた時に、幻聴に対応する活動の変化の様子を調べることによって、GPe-聴覚系回路と幻聴の関係を明らかにする。
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