研究領域 | 配偶子インテグリティの構築 |
研究課題/領域番号 |
19H05240
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
丹羽 隆介 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 教授 (60507945)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生殖幹細胞 / ホルモン / 神経伝達物質 / 卵 / ショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
(1)ニッチにおけるオクトパミンシグナリングの役割の解析 本研究では、ペプチドホルモンNeuropeptide F、昆虫ステロイドホルモン、神経伝達物質オクトパミン、そしてインスリンの4つに注目している。このうち、オクトパミンの役割そのものを解明する必要があり、追究を進めた。我々の解析から、オクトパミンは卵巣に直接投射する神経細胞で産生されており、この神経の活動によって卵巣へと放出されることが示唆された。また、放出されたオクトパミンは、オクトパミン受容体Oambによってニッチ細胞を含む卵巣体細胞によって受容されることがわかった。さらに、活性化されたOambによって、ニッチ細胞ではカルシウムシグナリングが上昇し、結果としてニッチシグナルが増強されて、生殖幹細胞の増殖が促されることが明らかとなった。一連の成果を報告した論文を執筆し、投稿を済ませた。
(2)ニッチにおけるホルモンと神経伝達物質のシグナル伝達経路の相互作用の解析 注目する4つの液性因子それぞれのシグナルおよび受容体の機能低下系統を活用し、交尾刺激に依存したメス生殖幹細胞の増殖におけるこれらのシグナルの上下関係を検討した。オクトパミンシグナルの効果は、NPF変異体あるいはNPF受容体変異体において観察されなかったことから、オクトパミンはNPFの上流で機能することが示唆された。一方、オクトパミンシグナルあるいはNPFシグナリング依存的な生殖幹細胞の増殖のいずれにも、昆虫ステロイドホルモンの受容体であるEcRが必要であった。これらの結果から、オクトパミン→Neuropeptide F→昆虫ステロイドホルモンという一連のカスケードが見て取れた。一方で、インスリンの位置付けについては明瞭にすることはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標としていた4液性因子の作用の上下関係については、インスリンについて不明瞭ではあるものの、残り3因子については明瞭なデータを蓄積することができた。この点は当初の期待どおりである。また、オクトパミンの詳細な機能解析を完了させ、論文投稿までたどり着くことができた。以上を総合すると、研究はおおむね順調に進んでいると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、オクトパミン論文の出版に向けた査読への対応、および3因子の機能解析をさらに深化させる。並行して、ライブイメージング技術を活用したシグナル伝達経路の可視化や、ニッチシグナル伝達分子のニッチ細胞における発現量やリン酸化状態の検討に入り、液性因子とニッチシグナルの関係性の追究に入る。
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