公募研究
生命の根源である遺伝子発現には、クロマチン動態が重要な役割を果たすと考えられている。しかしながら、クロマチン動態や、その制御因子群がクロマチン上で起こす動的構造変化をナノ空間かつ、リアルタイムで可視化し解析した例はない。本研究は、高速原子間力顕微鏡(以下、高速AFM)を用い、クロマチンのナノ動態の実時空間イメージングを試み、クロマチン動態および、その関連タンパク質の分子作動機構を明らかにすることが目的である。最終年度は、初年度で得た高速AFM基板条件を用い(1)ATP依存性クロマチンリモデリング複合体(SNF2H)の高速AFM観察を行った。試験管内で、あらかじめSNF2Hとヌクレオソームを結合させ、ATP非存在下で高速AFM観察を行った。しかし、SNF2Hとヌクレオソームが結合した複合体は観察されなかった。次に、高速AFM観察中にATPをバッファー内に添加し、リモデリング反応を開始させた。その結果、数回の観察例ではあるが、ヌクレオソームの近傍にSNF2Hが存在し、ヌクレオソームのヒストンコアの位置が変わる様子(再配列)を可視化することができた。この時、SNF2Hとヌクレオソームはタイトに結合するわけではなく、数nm程度離れた場所でSNF2Hのひも状ドメインがヒストンコアに作用する様子が見られた。(2)領域内共同研究(胡桃坂計画班)として、H2AヒストンバリアントであるH2A.Bを含むヌクレオソームの高速AFM観察を行い、H2A.B-H2BダイマーがH2A-H2Bダイマーと自発的に交換する分子メカニズムの解明を行った。通常型のヒストンで構成されたヌクレオソームとH2A.Bヒストンバリアントを含むヒストンで構成されたヌクレオソームを比較すると、ヌクレオソーム構造が大きく異なり、開いた構造をとることを発見し、H2A.Bヒストンバリアントの自己交換反応のモデルを提唱した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Communications Biology
巻: 4 ページ: 1-11
10.1038/s42003-021-01707-z
Biophysical journal
巻: 119 ページ: 1760-1770
10.1016/j.bpj.2020.09.026