本研究の目的は、「ヒストンの化学修飾」と「コンデンシンが引き起こすクロマチンDNAの構造変化」の関係を明らかにすることであった。そのために、コンデンシンがヌクレオソームを再構成したDNAを凝縮する様子を一分子レベルで観察する手法を確立した。まず、ガラススライド上に描画したナノパターン上にDNAの片端を固定して、溶液流によって伸長させた。DNAをYoYoIで蛍光標識すると、DNAが伸長する様子を観察することができた。そこにコンデンシンとATPを溶液流に乗せてロードした。コンデンシンをロードして、約1分後にDNAの長さが短くなるのが観察された。この結果は、1分子のコンデンシンが分子モーター活性を利用してDNAの縮小反応を行っていることを示唆した。次に、ガラススライド上に描画したナノパターン上にヌクレオソームを再構成したDNAの片端を固定して、溶液流によって伸長させた。ヌクレオソームの再構成には、大腸菌に発現させた酵母の野生型H3、H4、H2Bと、FLAGタグをコンジュゲートしたH2Bを精製して用いた。ヌクレオソームを量子ドットで蛍光標識すると、複数のヌクレオソームがDNA上に並んでいる様子を観察することができた。そこにコンデンシンとATPを溶液流に乗せてロードした。ヌクレオソームを量子ドットで染色しなかった場合、コンデンシンをロードしてから約1分後にヌクレオソームDNAの長さが短くなるのが観察された。一方で、量子ドットで染色すると、ヌクレオソームDNAの長さが短くなるのを観察することができなかった。この結果は、コンデンシンが分子モーター活性を利用してDNAの縮小反応を起こすときに、リング状の構造をとるコンデンシンのリング内部をヌクレオソームがくぐり抜けていることを示唆した。
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