公募研究
1)Rif1の核膜局在変異が複製、修復、転写、組換えなど種々の染色体動態におよぼす影響の解析動物細胞Rif1のC末端が核膜局在に必要であることを見出した。ゲノム編集によりRif1C末の点変異細胞株(ヒト大腸癌細胞HCT116由来)を樹立した。2450番目のCys1残基の欠失も含むこれらの変異株では、いずれもRif1欠失細胞と同様にゲノムワイドの複製タイミングが変化することを発見した。また、DSB損傷により、コロニー形成能が低下した。一方、Rif1はES細胞における2細胞特異的遺伝子発現を抑制する。しかし、Rif1変異はHCT116株では、遺伝子発現に大きな影響を及ぼさなかった。2)Rif1の核膜局在の機構Rif1末領域の変異により、Rif1は不溶性画分から可溶性画分に移行するとともに、核膜や核小体辺縁部への局在が見られなくなった。Rif1の核膜局在に関して、脂質修飾、特にパルミトイル化の関与を示唆するdataを得た。3)Rif1のG4認識の構造的基盤の解明分裂酵母及び動物細胞のRif1はC端とN端の2つの独立したG4結合ドメインを有する。N端はHEAT-Armadilloリピート構造を形成することが知られているが、C端のG4結合ドメインの構造は不明である。動物細胞ではC端の175aaでG4結合に十分であることが明らかになっている。分裂酵母Rif1はC端229aaにG4結合ドメイン、C端91aaに多量体形成ドメインが存在する。両者が協調してG4に効率よく結合する。Rif1の構造・機能の生化学的解析から、Rif1がG4結合を介してクロマチンを束ねクロマチン高次構造を形成するモデルを提唱した。ヒトRif1C端175aaポリペプチドは液相分離を誘導することを見出した。これのRif1の機能に関する意義を解析する。
2: おおむね順調に進展している
Rif1の核膜局在に必要なアミノ酸をC端領域に同定し、その変異細胞株を樹立した。それを用いてRif1の核膜局在がゲノムワイド複製タイミング制御に必要であることを証明した。また、Rif1の核膜局在の分子機構(パルミトイル化を含むリン脂質修飾)を示唆する重要な結果を得た。Rif1-G4相互作用によるクロマチン高次構造形成メカニズム解明のための構造解析に必要なタンパク質の調製を行なった。このように、グアニン4重鎖を介して核膜近傍に形成されるクロマチンドメインによる染色体動態制御機構を解明に向けて、細胞株やタンパク質の準備が進んだ。
1)2019年度樹立したRif1のC末端の変異細胞株(核膜局在を喪失)の、染色体結合をChIP-seqにより決定し、野生型Rif1と比較する。2)上記変異体と野生株で4C(Chromatin Conformation Capture)を行いクロマチンの相互作用パターンを比較する。Rif1がC端を介して核膜に局在するメカニズムを解明する(パルミトイレーションなどのリン脂質修飾を可能性として考えている)。3)Cys残基に16炭素の飽和脂肪酸のpalmitic acidに結合させる(ProteinS-palmitoylation)させるDHHC酵素は23種類存在するが、これらの中にRif1の局在を変化させる 酵素が存在するかを検討する。4)遺伝子発現ノックダウンあるいは薬剤によるパルミトイル化を阻害が、複製タイミング、Rif1の核膜結合、染色体結合に及ぼす影響を解析する。5)上記変異が核膜近傍のクロマチンの凝縮度、mobility(可動性)におよぼす影響を、1ヌクレオソームトラッキングにより解析する(遺伝研 前島一博博士と共同)。6)G4構造を検出するプローブを用い、細胞内のG4を検出し、その動態をRif1変異体、細胞周期、DNA損傷時で観察する(東京工大 伊藤由馬博士と共同)。7)N端及びC端のG4結合ドメインのG4との複合体のX線結晶構造解析(九州大学神田大輔博士と共同)、全長Rif1とG4の複合体のクライオ電顕による解析(米国Van Andel InstituteのHuilin Li博士と共同)を遂行し、Rif1によるG4認識の構造的基盤とそれによるクロマチン構造形成の分子機構を解明する。8)Rif1C末領域が形成する相分離がG4構造の形成、結合に及ぼす影響を解析する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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