ユビキチン化はタンパク質分解を制御する翻訳後修飾であり、多くの生命現象を支える極めて重要な翻訳後修飾の一つである。TRIMファミリーはRING型E3ユビキチンリガーゼの一つのファミリー(ヒトでは約70種)であり、様々な機能(がん、免疫、オートファジーなど)に関与することが知られている。本研究目的は、E3ユビキチンリガーゼであるTRIMタンパク質の「タンパク質」としての物理化学的な性質(物性)を解析し、将来的には創薬研究への知見を集積することである。実際に、TRIMタンパク質の機能を解明するために、基質タンパク質とユビキチンデコーダータンパク質を同定することと、およびTRIMタンパク質の構造を 決定することが重要となる。本年度は、シグナル伝達・選択的オートファジー・DNA修復・等に関与すると考えられているTRIMタンパク質を中心に、質量分析器(Hybrid IonTrap-Orbitrap LC-MS)を使用し、ユビキチン化基質タンパク質の同定を試み、複数のTRIMタンパク質に関して、基質タンパク質候補が同定された。 また、クライオ電顕によってTRIM68の構造解析を行ったところ、コイルドコイルドメインで折れ曲がる構造をしていることが判明し、それが酵素活性において何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。 さらに、温度変化などのストレスによってもたらされる物性変化で、どのようにユビキチンリガーゼの酵素活性が影響を受けるかを明らかにするために、ストレス関連E3ユビキチンリガーゼであるCHIPを用いて解析したところ、ヒトの体温である37度周辺に至適温度があり、許容範囲が狭いことが判明した。今後、ストレスに反応して機能すべきユビキチン化酵素が、生体において、いかに温度変化等に対応して機能しているかを明らかにすることが重要である。
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