当該年度においては、DNAメチル化酵素阻害剤として用いられている低分子化合物5-aza-dCTPがDNA維持メチル化機構に及ぼす影響についての解析を中心に研究を実施した。5-aza-dCTPはdCTPの誘導体であり、DNA複製時にゲノムDNAに取り込まれると、DNAメチル化酵素DNMT1と不可逆的なDNA-タンパク質架橋を形成することで、DNMT1の阻害とそれに伴うタンパク質分解を誘導することが報告されている。しかしながら、DNMT1-5azadC架橋がどのようなプロセスで修復されるのかは明らかとなっていない。そこで、DNA維持メチル化の過程を試験管内で再現可能であるXenopus egg extracts由来の無細胞系をを用いて、この問題に取り組んだ。まず、5-aza-dCTP処理に伴い、DNMT1がクロマチンへの強い蓄積を引き起こすことを確認した。また、興味深いことに、この時DNMT1はSUMOによる翻訳後修飾を受けることが明らかになった。さらに、DNMT1の制御因子であるE3ユビキチンリガーゼも、DNMT1同様にクロマチンに集積しており、UHRF1のユビキチン化基質であるヒストンH3やPAF15が強くユビキチン化されていた。このような状況下でクロマチンに集積するタンパク質についてCHROMASS法を用いて網羅的に同定したところ、SUMOシグナル依存的、あるいは非依存的にクロマチンに集積するタンパク質を20種類同定することに成功した。一部のタンパク質については、特異抗体を用いて、5-aza-dC処理したクロマチンへの集積をイムノブロットによっても確認している。現在、これらのタンパク質について、DNMT1-5-azadC架橋のプロセシングにどのような役割を果たすのか、解析をさらに進めている。
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