(1)プロテアソーム関連因子RPN10に結合する人工抗体の開発と応用、(2)ユビキチン化リボソームに結合する人工抗体の取得と応用、(3)ユビキチン化タンパク質の化学合成と構造解析への応用研究、という4テーマについて研究を推進した。 テーマ(1)について:我々の研究グループの独自技術であるTRAPディスプレイ法を用いてRPN10の3つの異なるドメイン(UIM1、UIM2、RAZUL)に対して選択的に阻害することが可能な人工抗体の取得を目指して研究を推進した。3つのドメインそれぞれに対してTRAPディスプレイ法を用いて人工抗体をスクリーニングした結果、UIM1に選択的に結合するFynomer、RAZULドメインに選択的に結合するMonobodyの取得に成功した。RAZUL結合Monobodyに関しては、RAZUL-AZUL間のタンパク質間相互作用を競合的に阻害可能であることが明らかとなった。これらの人工抗体は、共同研究先において細胞内で発現させ、その機能解析を進めている。 テーマ(2)について:ペプチド合成およびペプチドライゲーション技術を駆使し、ユビキチン化されたリボソームタンパク質の部分ペプチドをまず化学的に合成した。今後、TRAPディスプレイ法を用いて人工抗体の取得を試みる予定である。 テーマ(3)について:エピジェネティクス分野で重要な「維持メチル化」機構に深く関わるジユビキチン化されたPAF15タンパク質の化学合成を行った。具体的には、5つのペプチド断片をFmoc固相合成法によって作製した後、N末端側のペプチド断片から順次連結させ、途中に脱硫反応(Cys-Ala変換反応)を経て、ジユビキチン化された全長PAF15の合成に成功した。ただし、合成量は低く、HPLC精製によって除くことのできない不純物が一定量混入していたため、合成ルートを改善して再合成を行う予定である。
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