研究実績の概要 |
申請者は、脱ユビキチン化酵素(DUB)の中でUSPファミリーに属するDUBのみを特異的に阻害する低分子化合物Subquinocinを取得している。そこで本研究では炎症・免疫応答やタンパク質分解に重要な役割を担うUSP14, USP15, CYLDの3種のUSPを解析対象として、Subquinocinの構造展開により、それぞれのUSPに高い特異性を示す低分子化合物の開発を行った。 前年度に研究協力者の理化学研究所の本間 光貴先生との共同研究により、東京大学創薬機構が保有する化合物の中からSubquinocinと類似構造を持つ化合物を320種類選抜した。この320種類の化合物について、既に化合物の評価系が構築されているCYLDとUSP15への阻害効果を調べた結果、阻害活性が非常に高い化合物を2種見出し、UI1, UI2と命名した。SubquinocinのCYLDおよびUSP15への阻害率は10マイクロMでそれぞれ10%、30%だったが、UI1は同濃度でUSP15とCYLDの双方をほぼ100%阻害し、UI2はUSP15を80%阻害する結果だった。さらにこれらの化合物のUSPに対する特異性についてDUBパネルを用いて調べたところ、どちらも複数のUSPを阻害するものの、UI1はUSP15の他にUSP11など限られたUSPのみを阻害することが分かった。さらに、培養細胞を用いてこれらの化合物の効果を評価した。USP15はRIG-I依存的なNF-kB経路活性化を亢進することが報告されているが、UI1、UI2のどちらの化合物もRIG-IによるNF-kB活性化を亢進する結果が得られ、これらの化合物は細胞内のUSP15を阻害している可能性が示唆された。 またDUB阻害剤の選択性を調べるDUBパネルについても、10種類以上のDUBを追加し、より幅広いDUBで化合物の特異性を評価することが可能となった。
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