研究領域 | 時間生成学―時を生み出すこころの仕組み |
研究課題/領域番号 |
19H05306
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池上 高志 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10211715)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 認知地図 / place cell / 主観的時間 / GAN |
研究実績の概要 |
新学術領域研究「脳とAI」に公募班として参加したときに提案した、生成モデルの深層学習の一つを改良し、VAEGAN(Variational AutoEncoderのGAN)を用いて、place cell的なニューロンを生成。特に仮想空間上の迷路を探索・学習させ、その認知地図上の時間経過がどのように変化するかを解析した。 replayにおける「時間の圧縮」(ratの実験では実際よりも7倍から20倍速く巡回する)を、認知地図の圧縮性から説明可能ではないか、という議論をし、現実世界のムービーを使った同じシステムの学習も用いて、その仮説の正当性を議論した。より具体的な結果として、 生成ニューラルネットワークの潜在空間は、単純なデータセットと複雑なデータセットの両方の根底にある時空間構造を捉えることができることを発見した。また、記憶から再構成された動画の時間構造は、元の動画の時間構造とは異なることがわかった。 動物は感覚入力から世界を内部的に再構築する「認知マップ」を持っているが、特に、空間情報を符号化することで知られる海馬は、過去の軌跡を時間的に圧縮して前再生・再生しているはずだが、この圧縮率の変動の理由は明らかにされておらず、今回の結果がそのメカニズムの候補となる可能性がある。
この成果は、科研費の発表会(2019年8月、札幌)で好評を博し、最優秀賞を獲得した。現在は、この結果の論文化を行っている。また研究計画にある人工システムの設計と実装のほうは、記憶のreplayを生成するプロジェクターのフレームレートを可変にするシステムを構築中であり、ハード的な部分は5割方完成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
論文がまだ発表されていないので、遅れているとした。これは夏までには投稿予定。また実機の制作が課題であるが、3月からのcovid-19で減速させられている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、計画通り実機を構築して、主観的時間(この場合にはシステムの)が伸び縮みするシステムを制作する予定である。
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