環境の情報を手掛かりにして、その後の行動を決定するためには環境の変化を予測して、適切な行動を適当なタイミングで実行する必要がある。タイミングを計っている時には脳の様々な領域で活動がみられるが、環境からの入力がどのようにこれらの神経活動を誘発して、適切なタイミングで行動を起こす事ができるようになるのかについてはよくわかっていない。本研究では、環境情報を手掛かりに、適切な行動を、そのタイミングを調整しながら実行するために必要であると予想されている、後頭頂葉から高次運動野への情報フローをカルシウムイメージングと光遺伝学による神経活動操作法を用いて実際に霊長類の大脳皮質で計測し、検証する事を目的とする。 2020年度は、主にコモン・マーモセットを対象として新規の運動課題を開発した。この課題でマーモセットを訓練した結果、環境の情報が少ないと課題の成功率が下がり、行動タイミングのばらつきが大きくなる事を確認した。また、運動課題中に大脳皮質の運動関連領域で1光子カルシウムイメージングによって神経活動を同時に記録するための方法を確立した。1光子イメージングした領域を2光子イメージングする事によって同一の個体から領域~細胞レベルの空間分解能で大脳皮質運動野の活動を計測する事が可能となり、今後はこれらの技術によって、行動タイミングを制御する脳領域の活動がどのような細胞集団活動の結果として生じているのかを明らかにしたいと考えている。
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