本研究では、これまでに得た間隔時間知覚における同期的神経活動の役割についての知見に基づいて、経頭蓋交流電気刺激(tACS)や周期的な触覚刺激を用いて知覚される時間の長さや速さを操作し、間隔時間知覚の神経機序について新たな知見を得ることを目的とした。また、時間経過に注意が向いていないより現実的な環境で間隔時間知覚を測定することにより、間隔時間知覚における注意の役割を明らかにすることも目指した。2019年度に行った実験は以下のとおりである。 1. 時間知覚に関する加齢の効果を検証した。特にimplicit な時間知覚とexplicitな時間知覚に関する年齢の影響について検証した。結果をまとめた2報の論文が査読中である。 2. 瞬時に複数の情報の平均値が知覚できるというアンサンブル知覚の特性が時間知覚についても存在するかを検証した。結果をまとめた論文を執筆中である。 3. 明滅する視覚刺激が神経引き込みを介して時間知覚に及ぼす効果を検証した。結果をまとめた論文は、Journal of Vision誌に掲載予定である。 4. 視覚と聴覚の時間情報統合を検証し、ベイズ統計を用いたモデル化を行っている。この手法を用いて、注意が時間情報統合に及ぼす効果を明らかにする予定である。 さらに、コロナウイルス感染防止のための外出規制時の時間知覚について、国際共同研究に参加している。現在、100人以上から400時間分のデータを取り終えている。今後は外出規制が解除された1ヶ月後と3ヶ月後のデータを取り、特殊な状況下での時間知覚について経時的に検証する予定である。
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