やわらかい材料で作った構造を油圧で制御するソフト油圧ロボティクスによって、やわらかさと力強さを両立するロボットハンドの開発を行った。 1. ロボットハンドに用いる指部について、耐油性をもつニトリルゴムを切削加工により円筒状に成型し、その周辺を繊維で拘束するのと同時に指の腹側の変形をゴムライク樹脂によって拘束することで、円筒内部に高圧を印加して屈曲変形を取りだす指構造を開発した。 2. 指2本からなるロボットハンドを試作し、それを用いて5kgの物体の把持実験に成功した。これは既存のソフトロボットに比べてはるかに高い把持力を実現していることを意味する。 3. 指に入力する圧力とそれによって生じる屈曲角の関係をベイズ線形回帰モデルにより確率的にモデル化した。また、屈曲角をカメラ画像でセンシングし、それをフィードバックすることで屈曲角を精度よく制御する方法を開発した。 4. カメラ画像のデータから機械学習技術により画像中の物体を認識し、適切に物体把持を行う制御系を実現した。 また、ヒューマノイドの足部について、スポーツ義足のような柔軟変形する構造を脚部に持つような多リンク系の運動についても研究を行った。特に、梁やロッドとして近似できる構造の柔軟変形の運動を区分的一定ひずみモデルでモデル化し、そのダイナミクスをシミュレーションする技術を開発した。これらの研究成果は人間と同程度のスケールの把持力を実現しつつ柔軟性を兼ね備えたロボットハンドや、スポーツ義足等の人間が装着する柔軟な構造をモデル化しシミュレーションする技術へ応用でき、従来のソフトロボットの枠組みを人間スケールの運動と力を実現するロボットシステムへと拡張する研究成果である。
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