(1)重荷重試験機の開発:前年度までに開発した繰り返し曲げ試験機は,幅55mmのベルト状の布に対して最大250N程度の力を印可し,平プーリ上を転がるようにして繰り返し曲げを印可していた(この装置を便宜上,軽荷重試験機と呼ぶことにする).新学術の領域会議の議論の中で,1)1か所を集中的に繰り返し曲げた場合の耐久性,2)印可する張力が高い場合の耐久性の2点について検証することが必要であるとの認識に至った.そこで,新たに上記1)2)を満たす重荷重試験機の設計開発を実施した.最大発生力17.8kNの空圧シリンダにより,ベルト状の布に張力を印可した状態で,1か所のみ角ブロックの頂点に押し付けるようにして屈曲させる試験装置の機構を考案した.試験時間を短縮するため,1度の屈曲試験で4試片の試料が作成できるよう,連結差動機構により張力が均等にかかる機構を導入している.具体的な設計を行い試験装置を完成させた. (2)軽荷重試験機によるパラ系アラミド繊維布の屈曲耐久性評価:原糸をパラ系アラミド繊維として3つの異なる構造(平織・綾織・ニット)の布に対し,7万回の繰り返し屈曲試験を実施し,その後,前年度までに構築した布つかみ治具を用いて引張試験を行い破断強度を測定した.屈曲前の破断強度に比して,どの程度,破断強度が低下するかを計測した.その結果,綾織では張力を印可する向きにより破断強度が異なること,繰り返し曲げ後では4割程度の強度低下が起こることなどを明らかにした. (3)ソフトロボットハンド機構の開発:パラ系アラミド繊維をニット構造で伸縮可能なように構成した布を用いて把持機構を試作した.前年度までに開発した空圧駆動の4本の柔軟指の間に,前述の布を用いて膜構造を構成するとともに,底面部をすぼめるように糸で縮めることで,食品を模したサンプル物体を柔らかく把持できることを定性的に確認した.
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