公募研究
化石燃料やその産物としての電力に依拠した既存の機械システムに代わる、クリーンで安全かつ高効率なデバイス開発は現代諸分野が抱える共通課題である。その解決策としてこれまで代表者は、化学エネルギーのみで多彩で高効率な機能を発現でき、材料は自然に還元される生物機能に着目し、これと人工物を融合した新機能デバイスを開発してきたが、神経や血管等も含む動物の複雑な組織切片の機能維持やデバイス搭載は難しく、倫理的問題もあり、単発機能実証に留まっていた。そこで、本研究では、切片の生育が容易で倫理的な問題も少ない植物であるオジギソウの機械・光・熱刺激等によるマルチセンシング・情報伝達・運動機能に着目し、それらのデバイス集積化による流体制御デバイス・ロボット・発電機といったスマート(多機能)デバイスを創成する。当該年度は、組織・機能計測の解明のため、まずは研究室でのオジギソウの通年栽培を確立し、更に栽培されたオジギソウを用いて機能・力の計測方法を検討した。オジギソウは本来多年草であるが、耐寒性が低いため通常冬には枯れてしまう。そこで、室内で温湿度管理・光量の条件検討を行うことにより、冬でも栽培を維持することに成功した。また、研究協力者の基礎生物学研究所・長谷部教授に伺いながら生育の良い土を探し、土を使用前にオートクレーブすることにより害虫防止も行い、常に元気なオジギソウを準備することに成功した。また、オジギソウは振動・接触・切断等の機械的刺激によりイオンと水の移動が起こることにより下垂運動が引き起こされるとされているが、茎の切断後でも下垂運動、下垂後の回復が起こるかどうかも検証した。更にデバイス開発にむけ、オジギソウ主葉枕による複葉全体の下がり力及び戻り力の測定を行った。
2: おおむね順調に進展している
当該年度は、当初予定通り、オジギソウの形状・機能計測の解明・デバイスの開発・作製の検討を行うために、まずは研究室でのオジギソウの通年栽培の確立に成功し常時元気なオジギソウを準備できたことにより、オジギソウの基礎的な特性を把握することができ、また、鉢植え状態での特性だけではなく、茎を切断後、水を入れたチューブに切断面を挿して固定した状態でも複葉全体の下垂運動・回復が繰り返し行われることがわかった。さらには、主葉枕を含む分岐部の上下で茎を切り取り、葉柄を1本のみ残した状態でも、刺激により下垂運動・回復が繰り返し行われ、実験2日後でも動くことがわかり、今後デバイス化を行うにあたり、より扱いやすくなったことから、計画通りに研究が推進できたといえる。
今後は、具体的なデバイス作製実験へと移行する。具体的には更に詳細な形状・機能計測を行い、オジギソウの特性を十分に把握することによりデバイス開発に必要な基礎的な知見を得つつ、センサ・情報伝達・運動機能を高度集積したスマート(多機能)デバイスの開発にむけてまずはバルブの実証に向けたデザインを詰め、その後作製、実証実験を行う。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件)
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