研究実績の概要 |
縄文人ゲノム34個体、中国古代人ゲノム47個体(Yang at al., 2020とNing at al., 2020による北東アジア由来で約1万~3000年のゲノム配列)を用いて、現代日本人集団との比較を行った。各集団のアレル頻度をSNP座位を含むリードのカウントを使用して、最尤推定した (Mathieson et al., 2015)。日本人集団と分化している領域を検出するため、 (1)現代日本と縄文人間、(2)現代日本と古代中国人間について、FSTを領域ごとに計算し、その値が大きい上位0.1%以上を分化している領域として検出した。日本と縄文間で分化している遺伝子として2型糖尿病(SNHG17、NAMPT、ACAD10) や肥満(ATXN2)などエネルギー代謝や糖質代謝に関わる遺伝子や、心疾患(TEX41)が検出された。また、アルコール代謝に関わるALDH2, 耳垢(ABCC11)や乳がん(CYP1B1、ACBB11)などが検出された。ALDH2、ABCC11、CYP1B1は、現代日本人のゲノム配列から選択的一掃などを検出する方法で自然選択を受けた遺伝子としても検出されている(Okada et al. 2018, Yoshimura et al. 2006, Yasumizu et al. 2020)。2型糖尿病や肥満などに関わる遺伝子は、稲作伝来による食生活の変化が影響していることが考えられた。日本と古代中国人で分化している遺伝子として、統合失調症(GRIK1、THEM4、RP4-598G3.1)、アルコール代謝(ADH cluster)、前立腺癌(HDAC1)、膀胱癌(EDC3)、身長(DOCKK3)などが検出された。ADH clusterは、自然選択を受けた遺伝子としても検出されている(Yasumizu et al. 2020)。
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