本公募研究は、今年度に関しては、新型コロナウィルス感染症の流行により、研究者及び研究協力者によるミーティングおよび他研究機関における資料調査による新たなデータの収集は困難であった。したがって、主に研究者個々人による研究活動ないしは、同じ研究機関に所属する研究協力者の米元史織と舟橋が九州大学において研究活動を行った。米元と舟橋は、九州大学収蔵の遺跡出土人骨の資料化および計測・分析を行った。今年度新たに資料化・計測・分析を行ったのは弥生時代の福岡県博多遺跡203次調査・福岡県津古牟田7次調査・熊本県平田遺跡の3遺跡出土人骨である。一方で、他の研究機関に所属する研究協力者の高椋浩史、岡崎健治はそれぞれ前年度収集したデータの解析及び論文執筆を行っている。 分析の結果、先行研究の指摘通り、いずれの遺跡出土人骨においても渡来形質の特徴がみられるが、特に三国丘陵地域に所在する津古牟田において渡来系形質が色濃くみられ、列島の典型的な農耕民とは異なる四肢の筋付着部発達をしているという結果が得られている。 一方で、最新の考古学的研究成果においては、上述の三国丘陵地域周辺での渡来系の技術に由来する森林伐採加工活動の活発さが指摘されている。したがって、当該地域における渡来系形質が色濃く表れる背景には、渡来系技術を駆使し生業に従事していた渡来人ないしは渡来系集団の存在があると考えた。 本来であれば、本年度の後半にこれらの事業の成果をワークショップなどの形で一般に向けて還元する予定であったが、新型コロナの流行のため断念した。
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