研究実績の概要 |
国内のダイコンの栽培品種の栽培化過程を理解することは、ヤポネシアの移動・歴史・発展を理解することに繋がると考えた。そこで、本研究では、日本のダイコンの栽培品種が、どのような過程で生じたのかを明らかにすること目指す。 先行研究で実施した計164個体の加えて、8個の公開済みのダイコンの次世代シークエンスデータを、野生ダイコンのゲノムにBWAでマッピングし、GATKを用い、5%以上の個体で変異が存在するSNPを決定した。その後、二種類以上のSNPがある領域を削除した、全個体で塩基が決定された高精度の353,407個のSNPデータの構築に成功した。全SNPを用いて、近隣結合法で分子系統樹を構築した結果、世界の栽培品種の中で、日本の栽培系統は、日本の野生系統と共に大きな系統グループを形成した。この結果は、小林らが2020年に報告した結果と矛盾しない(Kobayashi et al. 2020. DNA Research)。また、日本のグループの中でも、沖縄の野生系統と本州の野生系統が分かれ、日本の栽培品種は主に、本州の野生種系統から派生していることを明らかにした。 さらに、日本の集団が多様化した年代は、Fastsimcoal2とTreeTimeで、1万年前と、おおよそ一致していた。この結果は、日本に存在する野生ダイコンは、野生種として日本に侵入した可能性が高いことが強く示唆される。そして、図4の系統解析の結果から、野生種の一部から、日本栽培ダイコンがヤポネシア人によって、栽培化されたと考えられた。しかし、現在でも頻繁に野生種と栽培種で遺伝子流動が頻繁に起きているため、日本の栽培品種の正確な分岐年代の推定は困難であった。
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