研究領域 | ゲノム配列を核としたヤポネシア人の起源と成立の解明 |
研究課題/領域番号 |
19H05349
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
木村 亮介 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00453712)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 琉球諸島 / ヒト集団 / ゲノム / 形態 / 多様性 |
研究実績の概要 |
研究代表者および研究協力者が収集した膨大なサンプルの中から、これまでに沖縄本島(n=25)、久米島(n=60)、宮古諸島(n=25)、八重山諸島(n=35)の人々の全ゲノム情報を取得した。本報告では、今年度行った沖縄本島および宮古諸島の集団構造および集団形成史を解析した結果について詳説する。尚、本研究は、研究協力者である小金渕佳江、石田肇、前田士郎ら、A01班の松波雅俊との共同研究である。 沖縄本島および宮古諸島の人々に漢民族および本州人のゲノムデータを加えて主成分分析を行なったところ、沖縄本島の人々は主にひとつのクラスターを形成し、宮古諸島の人々は、池間島および伊良部島に由来する人々から成る“北部クラスター”と宮古島および多良間島に由来する人々から成る“南部クラスター”に大きく分かれることが示された。これらのクラスターを集団とみなし、遺伝的多様性の大きさから過去の集団サイズの変遷を推定すると、宮古北部クラスター集団は強いボトルネック(集団サイズの減少)を経験していることが示された。 考古学や歴史学などの知見から考えると、主に縄文(貝塚)時代およびグスク時代における九州からの大きな移住の波によって、琉球列島集団は形成されたと考えられる。そこで、さらに縄文人のゲノムデータを解析に加えて、琉球列島集団の形成モデルの構築を試みたところ、縄文(貝塚)時代からの先住民とグスク時代における移住民が約2:8の割合で混血し、琉球列島集団が形成されたことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム情報を用いて宮古諸島の集団構造および集団形成史を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
(A)現代人ゲノムおよび古代ゲノム解析による琉球列島のヒト移動史の復元: 既に取得済みである現代人のゲノムワイド(GW)SNPデータおよび全ゲノムリシーケンシング(WGS)データを用いて、琉球列島のヒト移動史について集団遺伝学的に解析する。特に、八重山諸島の集団形成に焦点を当てて解析を行う。宮古島古人骨の次世代シーケンシングを行い、ゲノムデータを得る。それを現代宮古島集団のデータと合わせて解析を行い、考古学・歴史学的知見を考慮しながら宮古島におけるヒトの移動史について詳細を明らかにする。 (B)3D画像データを用いた琉球列島における頭蓋顔面形態の多様性解析: 既得のCT画像データを用いて、顔の表面形状および頭蓋の骨形状を解析し、琉球集団と本土集団の違いを明らかにする。幾何学的形態測定の手法を用いて、多数のセミランドマークによる形態解析を行う。主成分分析(PCA)や部分的最小二乗(PLS)回帰分析による線形な形態成分の抽出だけでなく、機械学習の手法を用いて、非線形な分類による特徴の抽出も試みる。宮古島出身者のCT画像データを解析する。同一被験者から得たDNA試料を用いて、ゲノムワイドSNP解析を行う。沖縄本島と宮古島との間の違い、および宮古島内での地域差について形態とゲノムの両面から議論する。
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