2019年度に続き、南九州南西諸島の古人骨資料の時代的・地域的空白を埋めるために指宿市の成川遺跡(弥生~古墳時代)の発掘調査を2020年8~9月にかけて行った。調査成果は、まず、調査区内に成川遺跡の特徴である立石が検出された。立石の周囲に重層的に土壙墓(古墳後期~弥生時代の墓)が営まれている。1950年代に行われた発掘調査同様、弥生時代の壺が立石の根元に供献されている。今後発掘を継続できれば、弥生時代の人骨が見つかる可能性は高いと考える。4 基の土壙墓が検出された(3 基は古墳時代、1 基は弥生時代の可能性もある)。2020-1 号墓は古墳時代後期の再葬墓。土壙墓の上に鉄製三葉環頭大刀柄頭が供献されていた。日本列島の中で土壙墓から検出された初例であり、出土地として日本列島の南限。成川遺跡を営んだ人々を考古学から考える上での貴重な遺物である。また、顔つきがわかる人骨が遺存していた。側頭骨錐体部も遺存していたが、DNAの検出はできなかった)。2020-2 号墓は仰臥伸展葬。脳頭蓋の保存状態は比較的よく、過短頭・低頭である。 徳之島湾屋地区岩陰の発掘調査も行った。曽畑式土器の包含層中から火葬人骨片が検出された。 また、鹿児島県内の教育委員会に保管されているが、所属年代が明確でなかった古人骨(南九州市の高取遺跡出土人骨、西之表市の田之脇遺跡出土人骨、鹿屋市の立小野堀遺跡出土人骨、鹿屋市の町田堀遺跡出土人骨、西之表市の小浜遺跡出土人骨)の1次資料化(年代測定、同位体分析やDNA 分析)を行った。
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