公募研究
本研究では、植物、植物由来材料および構造物の力学的最適化過程とサステナブル性の解明を目的として,レーザー直接描画法により形成した機能性パターンや種々センサーを用いた非破壊・リアルタイムセンシング法の開拓を行った。植物の変異過程の可視化解析のための微細マーキング法に関する検討では,植物の動的挙動を阻害しない可視化解析のための微細マーキング法として,植物表皮を覆うクチクラへのレーザーマーキングの検討を行った。これを植物(豆苗)の茎へ適用後にトルイジンブルー染色し,屈曲挙動における各マーキング点の変位ベクトルの解析を行った。垂直方向への変異が各マーキング点で示され,植物は屈曲と伸長のバランスを制御しながら力学的な最適化構造へ向かっていくことが示唆された。植物の力学的な挙動の支配因子の一つである細胞壁の膨圧に関連した情報のリアルタイムセンシングの検討を,アンテナ型センサーを用いて行った。植物の水の状態変化によってアンテナ周囲の誘電環境が変化することを利用したマイクロ波帯アンテナ型センサーによる測定を行ったところ,タイムラプスビデオによる豆苗の茎先端の軌跡解析とアンテナ型センサーからの信号変化には相関が示された。また,クロロフィル遅延蛍光観察による外的ストレスに対する植物のサステナブル性に関して,植物の生理活性に関係する指標と成り得るクロロフィルの遅延蛍光を用いた植物の動的過程でのストレスに関する検討を行った。豆苗の重力屈性に伴う遅延蛍光強度の減少が観察された
2: おおむね順調に進展している
本研究では,外部刺激に応答した植物,植物由来材料および構造物の力学的最適化過程とサステナブル性の解明を目的として,植物組織の変異過程を追跡し解析するための高い空間分解能と位置選択性を有したレーザーマーキング技術および植物に装着可能なセンサーを用いた植物の状態変化のリアルタイムセンシングの検討を行った。これまでの研究において,植物の変異過程の可視化解析のための微細マーキング法に関しては,355 nmパルスレーザー光により,植物組織表面のクチクラへ数マイクロメートルサイズの微小マーキングを行い,植物にダメージを与えることを極力抑えてながら,屈曲過程での各マーキング点の変位解析を行う手法を開発できた。また,植物の力学的な挙動の支配因子の一つである水の状態変化を知ることを目指して,アンテナ型センサーを用いたリアルタイムセンシング法を開発した。これらの手法を用いた植物の屈曲挙動の観察によって,植物が屈曲と伸長のバランスを制御しながら力学的な最適化構造へ向かっていく現象を明らかにすることができている。
これまでの研究においては,植物の動的挙動を阻害しない変異過程の可視化解析のための微細マーキング法による観察や,力学的最適化過程における植物組織の水の状態のマイクロ波アンテナ型センサーによる誘電率の変化からのリアルタイムにセンシングによって,植物の力学的な構造最適化過程を,巨視的な視点から観察してきた。その結果として,植物は屈曲と伸長のバランスを制御しながら力学的な最安定化構造へ向かっていくことが示唆されたが,このような現象を,植物は細胞レベルの構造においてどのように制御しているのかを知る必要がある。植物の細胞レベルの微視的な構造の変化と屈曲挙動という巨視的な構造変化の両面からの検討を進めることによって,植物の力学的最適化過程の戦略を明らかにすることを目的とした研究を推進する
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 9件、 査読あり 10件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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