研究領域 | 植物の力学的最適化戦略に基づくサステナブル構造システムの基盤創成 |
研究課題/領域番号 |
19H05357
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
矢島 潤一郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00453499)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | FRET張力センサー / 細胞骨格タンパク質 |
研究実績の概要 |
植物細胞内や細胞骨格から再構成されるテンセグリティ様構造体内の細胞骨格に依存した力バランスを定量するため、細胞骨格間にかかる力を測定する非破壊フォースセンシング技術(蛍光タンパク質からなるFRET張力センサー)の開発を主に行った。 1)コンストラクトの設計・発現・精製;センサーは、エネルギー共鳴移動可能な一組の蛍光タンパク質、バネタンパク質、一組の細胞骨格結合タンパク質からなる。植物細胞で機能する結合タンパク質の選定にむけ、細胞骨格結合タンパク質(微小管結合タンパク質として、ATP非依存性kinesinを、アクチン結合タンパク質として、anillin、α-actininを用いた)と、動物細胞から単離した細胞骨格との間の解離定数を生化学的手法によって定量した。また、1分子蛍光イメージング、及び高速原子間力顕微鏡の手法によって、結合タンパク質の結合時間や結合特性を明らかにした。蛍光タンパク質の組み合わせとして、従来よりもFRET効率の良い蛍光タンパク質の組み合わせを見出した。これらの結果に基づき、異なる結合特性を持つ複数のセンサータンパク質を作成し・大腸菌内及びヒト培養細胞内で発現させ、純度よく精製することに成功した。 2)負荷とFRETの同時計測系の開発;FRETシグナルの程度を「力」に換算するため、センサーのダイナミックレンジの定量を可能とする、光ピンセットユニットと1分子蛍光イメージングユニットとを組み合わせた計測系の構築を進めた。バネタンパク質のアミノ酸数を変えることで、おおよそ数pNから数10 pN程度までの異なるダイナミックレンジを有するセンサーを作成できる目途がついた。 3)植物細胞へのセンサーコンストラクトの導入;研究協力者の協力を得て、植物細胞に導入できるFRET張力センサーのDNAコンストラクトの作成を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
FRET張力センサータンパク質の特性の定量においては、一定の進展があった。しかしながら、センサーのDNAコンストラクトの作成においては、センサー内の一組の蛍光タンパク質が似たDNA塩基配列を保持し、また、センサー内の一組の細胞骨格結合タンパク質が同じDNA塩基配列を保持していることから、それらのDNA塩基配列の確認に予想外に時間を費やし、植物細胞へのセンサーDNAコンストラクトの導入方法の検討が遅れたため。
|
今後の研究の推進方策 |
FERT張力センサーが細胞骨格間の張力の定量に使用可能かを検証するために、張力に応じたFRETシグナルの定量を行う。このために、2019年度に開発を進めたセンサータンパク質を用い、より操作性の優れた力学測定が可能な光ピンセットユニットの構築を進め、1分子蛍光イメージングユニットとを統合した計測系を確立する。蛍光タンパク質間のFRERシグナルが元来有する特性により、力とFERTシグナルの関連付けが困難な場合は、蛍光タンパク質の代わりに光強度が強く安定したシグナルを有するCy3とCy5などの蛍光色素を用いてセンサー内のバネの特性を定量する。また、細胞骨格結合タンパク質に融合した蛍光タンパク質の偏光特性を利用した張力センサーの開発も行う。 In vitroで細胞骨格タンパク質、及び細胞骨格結合タンパク質からなる再構成テンセグリティ様構造体を形成し、ここにFRET張力センサータンパク質を導入し、センサー機能の検証を行う。 特性が既知となったFRET張力センサータンパク質を研究協力の協力を得て植物細胞内で発現させる。実験材料として、一過的発現系では、パーティクルガン法を用いて細胞が比較的大きく観察や外部操作が容易なタマネギ表皮細胞に目的DNAを形質転換し、安定発現株では、維持等が容易なゼニゴケを用いて目的DNAを形質転換する。植物細胞内で発現させたセンサータンパク質により細胞骨格間にかかる力の定量を行う予定である。
|