研究領域 | 植物の力学的最適化戦略に基づくサステナブル構造システムの基盤創成 |
研究課題/領域番号 |
19H05358
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
岩元 明敏 神奈川大学, 理学部, 教授 (60434388)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 物理的圧力 / 花芽分裂組織 / 構造模型 / テキスタイル |
研究実績の概要 |
これまでに開発した新規実験系を用いて発生初期のシロイヌナズナ花原基に人工的に物理的圧力を加え、花形態への影響を観察した。その結果、物理的圧力を与えた花芽分裂組織から様々な形態の花を誘導することができた。これは、物理的圧力に対する花芽分裂組織の力学的な応答(最適化)によるものであると考えている。その検証のため、物理的圧力を加える実験の対象について、遺伝子組み換え体PIP2a::GFPを用いた。PIP2a::GFP の花芽分裂組織を共焦点レーザー顕微鏡で観察することにより、その細胞輪郭について明瞭なGFP蛍光像が得られた。 また、この花分裂組織に物理的圧力を与える新規実験系に、微小圧力を測定する実験系を組み込む準備を進めた。まず、組み込みのための予備実験をすでに微小圧力を測定する実験系を確立、運用している研究協力者クラッセン-ボックホフ教授(マインツ大学)の研究室で行った。この結果、この測定実験系が物理的圧力を与える新規実験系に有効(組み込み可能)であることを確認した。本年度はマインツ大学からこの測定システムを貸借し、神奈川大学にて物理的圧力を与える実験系の組み合わせを行った。組み合わせについて必要な機器一式を購入し、それらも組み入れてシステム構築を行った。 さらに、これまでに新規実験系による実験結果に基づいて、テキスタイル(布生地)を用いた花芽分裂組織の構造模型を作成した。剛性を一次元的に変化させたテキスタイル模型を作成し、均等に力をかけた結果、剛性の違いによって変異(形態変化)に違いが生じることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の大きな目標の1つである花芽分裂組織における張力分布の変化の算出については、花芽分裂組織の可視化(共焦点レーザー顕微鏡を用いた分裂組織の細胞輪郭の取得)は達成することができた。しかし、物理的圧力を与えた後の花芽分裂組織で明確な蛍光像を得ることができておらず、進捗状況は十分とは言えない。 また、花分裂組織に物理的圧力を与える新規実験系への微小圧力を測定する実験系の組み込みについても、必要な機器を揃えて構築はできたが、稼働には至っていない。その原因は、中核となる微小圧力の測定装置(マインツ大学より貸借)が非常に古いコンピューターOSで稼働しているため、その調整に時間がかかっているためである。 花芽分裂組織を応用した構造模型作りについては順調に進んでいる。今年度はテキスタイルを用いた構造模型を作成することができ、現在さらに大型で精密に花芽分裂組織を再現した構造模型に取り組む段階に達している。 以上から、構造模型の作製は順調であるものの、花芽分裂組織における張力分布の変化の算出、物理的圧力を与える新規実験系への微小圧力を測定する実験系の組み込みについては若干の遅れがあることから、全体としては研究の進捗はやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
花芽分裂組織における張力分布の変化の算出については、まず物理的圧力を与えた後の花芽分裂組織で明確な蛍光像を得るために条件検討を進めていきたい。同時に、得られた蛍光像を適切にフィルタリングし、張力分布計算が可能な画像にすることを領域内の他班(杉山班)の協力も得ながら進めて行く。 新規実験系への微小圧力を測定する実験系の組み込みについては、中核となる微小圧力の測定装置の制御について、専門知識をもった研究協力者と連携して進めて行く予定である。 また、花芽分裂組織を再現した構造模型については、今年度も緊密に連携してきた連携研究者の岩元真明助教(九州大学)、荒木美香准教授(関西学院大学)と引き続き協力しながら推進していく。
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