これまでに独自に開発した新規実験系を用いて、発生初期のシロイヌナズナ花原基に人工的に物理的圧力を加えることにより、通常とは異なる様々な形態の花を誘導することができた。これは、物理的圧力に対する花芽分裂組織の力学的な応答(最適化)によるものであると考えている。 さらに、この新規実験系に微小圧力を測定する装置(Pollination Simulation)を組み込むことで、物理的圧力の定量化に取り組んだ。現在、この装置をマインツ大学より貸借して神奈川大学に設置し、新規実験系への組み込みを進めている。 また、花芽分裂組織の3次元構築を行うため、新規実験系で物理的圧力を加える前後の35S::PIP2a::GFPを共焦点レーザー顕微鏡で観察し、花芽分裂組織の表皮細胞の細胞輪郭の画像の取得を行った。現在、得られた細胞輪郭画像を用いて花芽分裂組織における表皮細胞層の3次元構築を行うことを進めている。3次元構築後は、各細胞の重心位置を決定した上で構造計算を行い、張力分布を計算する。これと並行して、物理的圧力を加える前後のrevDR5::GFPを共焦点レーザー顕微鏡で観察し、花芽分裂組織におけるオーキシン応答の解析も行った。これまでのところ、物理的圧力によってオーキシン応答の変化が誘導されることが分かった。 以上の実験結果に基づき、花芽分裂組織の特性を応用して一部の剛性を変化させた膜構造物を作成し、自由曲面を形成することを目指した。テキスタイル模型を作成して実験を行った結果、均一な剛性を持つ膜構造物と不均一な剛性をもつ膜構造物では、等分布荷重を与えた際に形状の変化が認められた。現在、剛性を2次元的に変化させた模型をつくり、花の複雑な形態をより正確に模倣できる膜構造の作成に取り組んでいる。
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