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2019 年度 実績報告書

テンセグリティに調節される植物先端成長細胞の可塑的モノコック構造の解明

公募研究

研究領域植物の力学的最適化戦略に基づくサステナブル構造システムの基盤創成
研究課題/領域番号 19H05364
研究機関名古屋大学

研究代表者

佐藤 良勝  名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任准教授 (30414014)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワード植物構造オプト / 細胞壁 / 先端成長 / マイクロ流体デバイス / ライブイメージング
研究実績の概要

植物細胞は高い膨圧と細胞壁成分による壁圧の力学的バランスを維持して成長する。空間構造学の言葉で置き換えるなら、植物細胞は可塑的モノコック構造と形容できるのではないだろうか。一方、植物の形づくりは外的な圧力の影響も強く受けるが、物理的な力に対する細胞個々の力学的最適化を細胞壁再構成原理を考慮して理解するためには、単一細胞における力学的最適化機構を解析する系が必要である。そこで、申請者は動植物に共通する細胞伸長様式である先端成長に注目した。本研究では、植物の先端成長細胞の力学的可塑性に着目し、マイクロ流体デバイス、蛍光ライブイメージング、力学測定技術などの技術を駆使して、植物細胞の力学的最適化応答機構の解明を目指している。マイクロ流体デバイス作製については、これまでに細胞形態変化を誘導する細胞サイズよりも小さなデバイスを独自に設計し作製できる状態になっている。細胞形態変化に伴う細胞内情報変化の蛍光ライブイメージング解析については、微小管可視化株とカルシウムイオンセンサー導入株を用いてライブイメージング解析を既に進めている。また、近赤外蛍光色素による細胞壁のモニタリングについては、既に生細胞での適用に成功しパブリケーションに向けて準備している段階にある。最後に、細胞非接触による力学的な性質変化の測定については、原理の異なる複数の方法で遂行する予定であり、それぞれ申請者の実験系への適用について共同研究者と緊密な議論を進めている段階にある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

細胞サイズ以下のマイクロ流路製作について、我々は細胞局部的な機械的刺激を確実に与える構造を配し、最適な流路幅や流路間距離を評価できるマイクロ流体デバイスの設計および作製を行った。光リソグラフィなどMEMS技術が必須な本過程はこれまで分析化学者に頼ってきたが、緊密な議論と教育訓練を繰り返すことにより、現在では解析内容に則したマイクロ流体デバイスを独自に設計し作製できるまでになった。また、植物の外部空間認知と細胞内応答過程をモニターするため、微小管可視化株とカルシウムイオンセンサー導入株を用いてすでにライブイメージング解析を進めている。ケミカルバイオロジーを専門とする化学者とともに開発した細胞壁染色色素については、ヒメツリガネゴケ、シロイヌナズナにおいて、細胞壁特異的な染色に成功しており、パブリケーションに向けた準備を進めている。一方、力学測定に関しては、有機合成化学を専門とする協力研究者が開発した、力学的環境変化に応答して蛍光色を変化させる分子の活用について、本研究への活用にむけて緊密な議論を進めている。上記の理由から、進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

本年度は、昨年度に引き続き、先端成長細胞の細胞形態変化を誘導する最適なマイクロ流体デバイスの製作と細胞形態変化に伴う力学的な性質変化、細胞内情報の計測を行う。細胞形態変化に伴う力学的な性質変化の計測については、原理の異なる複数の最先端技術を駆使して、マイクロデバイス内での細胞力学測定を試みる。まず、マイクロ流路デバイスを用いた細胞機能測定は、カバーガラスとPDMS に挟まれた環境下で行うため、AFMによる直接的な力学的測定は困難であることがわかった。そこで、本年度は、生体計測化学を専門とする研究協力者の協力のもと、レーザーを用いた非接触の力学的測定法を試みる予定である。また、有機合成化学を専門とする協力研究者が開発した、力学的環境変化に応答して蛍光色を変化させるPDMSを活用し、外力に対して細胞が伝える力を蛍光波長変化で測定することを試みる予定であり、マイクロ流体デバイス内で起きる植物先端成長細胞の力学的な性質変化の計測を実現したい。一方、細胞形態変化に伴う細胞内情報変化の計測については、細胞骨格可視化株、細胞内カルシウムイオン可視化株は使用できる状態にあり、細胞内形態変化に伴う動態のライブイメージング解析を遂行する。さらに、近赤外蛍光の細胞壁染色色素の開発については本年度中に研究成果として報告する予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (3件)

  • [国際共同研究] Max Planck Institute(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      Max Planck Institute
  • [雑誌論文] N-Aryl Pyrido Cyanine derivatives: nuclear and organelle DNA markers for two-photon and super-resolution imaging2020

    • 著者名/発表者名
      Kakishi Uno, Nagisa Sugimoto, Yoshikatsu Sato
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1101/2020.05.26

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Cell-cell adhesion in plant grafting is facilitated by β-1,4-glucanases2020

    • 著者名/発表者名
      Michitaka Notaguchi, Ken-ichi Kurotani, Yoshikatsu Sato, Ryo Tabata, Yaichi Kawakatsu, Koji Okayasu, Yu Sawai, Ryo Okada, Masashi Asahina, Yasunori Ichihashi, Ken Shirasu, Takamasa Suzuki, Masaki Niwa, Tetsuya Higashiyama
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1101/2020.03.26.010744

    • オープンアクセス
  • [学会発表] New fluorescent dyes for labeling nucleic acid and plant cell wall2019

    • 著者名/発表者名
      Yoshikatsu Sato
    • 学会等名
      EMBO Practical Course -Functional Imaging of Plants-
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 植物先端成長細胞の力学的可塑性について2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤良勝
    • 学会等名
      日本メカノバイオロジー研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 近赤外チャンネルを使ってみませんか2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤良勝
    • 学会等名
      第83回日本植物学会 関連集会
    • 招待講演
  • [図書] 実験医学2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤良勝
    • 総ページ数
      147
    • 出版者
      羊土社
    • ISBN
      9784758125253
  • [図書] アグリバイオ2019

    • 著者名/発表者名
      多喜正泰,佐藤良勝
    • 総ページ数
      102
    • 出版者
      北隆館
    • ISBN
      01327-02
  • [図書] アグリバイオ2019

    • 著者名/発表者名
      大塚沙穂子,佐藤良勝,日渡祐二
    • 総ページ数
      102
    • 出版者
      北隆館
    • ISBN
      01327-02

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公開日: 2021-01-27  

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