研究領域 | 植物の力学的最適化戦略に基づくサステナブル構造システムの基盤創成 |
研究課題/領域番号 |
19H05369
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
張 景耀 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50546736)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 成長応力 / 構造最適化 / 構造解析 / 形状計測 / 成長戦略 |
研究実績の概要 |
空間構造は、美しい形態と合理的力学特性の有機的融合により、少ない材料で高い構造性能と大きな無柱空間を実現している。しかし、革新的技術の不在が顕著に現れ、既存手法では張力構造などの新しい構造システムの創出は困難であり、空間構造の本質的変革に繋がると期待しにくい。一方で、樹木は、建築と同じく地球の重力環境に置かれ、地上で最も巨大な生物へと進化を遂げた。実に張力構造である樹木の形態を、空間構造の形態解析に適用した研究は多く存在しているが、そのほとんどは樹木の外観形状を模倣したものであり、樹木の重力環境に適した本質的生長様式に着目した研究は皆無である。 本研究を通じて、空間構造のブレークスルー的進化に寄与し、木本植物の重力屈性の力学的メカニズムの解明にも貢献したい。また、新たな空間構造システム(新構法)の提案より、それを実現するための新素材の開発につながる。R1年度には、以下の研究成果が得られた。 ①成長応力分布解析:幹または枝の外周応力を計測した前提で、その内部に生じる成長応力の分布を数値的に解く手法を提案した。ここで、材料の異方性も含まれている。また、成長応力の原理に基づいて、新たな構造形式の提案にも試みた。 ②張力構造最適化:木材の強度的異方性および成長応力をヒントとし、異なる材質を利用した2次元張力トラス構造の最適化手法を提案した。 ③樹形計測と解析:3Dスキャナを用いて小規模の植物を計測し、有限要素法を用いてその自重に応力分布を解析した。また、L-systemの記号記述法を用いて、計測された木の形を再現してみた。さらに、自動運転で利用されているLiDARを用いて、木の形状にかかわる大規模な点群データの取得に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究がおおむね計画通りに進んでいる。また、R1年度で得られた研究成果は、研究目的を達成するのに重要な土台となる。
|
今後の研究の推進方策 |
①構造解析の有限要素法に基づいて木の成長に伴う成長応力分布をシミュレーションし、その発生メカニズムの解明を試す。 ②提案手法をより大規模な3次元構造物へ適用する。とくに、超高層ビルの最適化への適用に試みる。 ③点群データより樹形を抽出する方法を考案する。また、それに基づいて、記号記述法による樹形の表現(再現)手法を検討し、木の成長に伴う応力の分布を計算する。さらに、木の形を利用した大スパン構造の形状最適化手法を提案する。
|