研究領域 | 発動分子科学:エネルギー変換が拓く自律的機能の設計 |
研究課題/領域番号 |
19H05376
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松野 太輔 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (80749143)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 分子ベアリング / 発動分子 / フラーレン / 動的挙動 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,「機械力により駆動する発動分子ベアリング」と題し,申請者らが研究を進めてきた「分子ベアリング」を「発動分子」の観点に基づい多機能化を目指すものである.本研究では,以下に示す3つの研究項目を段階的に実施する計画である.すなわち,[1] 発動分子ベアリングの構築,[2] 共有結合開裂による分子ベアリング構築,[3] 発動分子としての物性と機能開拓.2019年度には項目1及び2を進めてきた.発動分子ベアリングの構築,共有結合開裂は計画通り順調に進メルことができている.また,研究遂行の過程で得られた深く関連する成果として,筒状炭化水素分子と楕円体状回転子からなる新たな分子ベアリングの構築と固体内動的挙動に関する成果を得た.以前に申請者らが発見した球状回転子の等方性慣性回転とは異なり,楕円体状の回転子は固体内において単軸性の回転を示した.詳細な速度論的解析により,その回転挙動は活性化エントロピーに深く関連することを明らかとした.現状ではまだ「発動分子」と称しうる系とはいえないが,動的挙動に関する重要な知見であると考えている.この成果はChemistry -An Asian Journal誌に掲載された.また,楕円体状回転子の成果に加え,分子ベアリングにおけるゲスト回転子の形状と動的挙動の関係についての成果として,筒状分子と平面状ゲストを組み合わせた超分子会合体の構築も行なった.この平面状ゲストも円対象から外れた "oval" な形状を取っており,会合体形成に際してホスト分子を変形させる.これによりゲスト分子の回転がほぼ完全に妨げられた状態となることを見出した.この成果もAngewandte Chemie Interanational Edition誌に掲載された.これらの成果は,来年度以降本格的に遂行する発動分子ベアリング構築に資する成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題は,以下に示す3つの研究項目を段階的に実施する計画である.すなわち,[1] 発動分子ベアリングの構築,[2] 共有結合開裂による分子ベアリング構築,[3] 発動分子としての物性と機能開拓.2019年度には項目1及び2を遂行する計画であった.[1]発動分子ベアリングの構築 に関しては,分子ベアリングの構築をNMRスペクトル測定,蛍光消光滴定や等温滴定型カロリメトリー等を用いて検討を進め,目的とする分子ベアリングの構築とその熱力学を明らかにすることができた他,シンクロトロンX線結晶構造解析を用いた固体中での分子構造を解明した.このように項目1は当初の計画通りに進行している.[2] 共有結合開裂による分子ベアリング構築 については,項目1で得られた分子ベアリングに対して化学的刺激を与えることで達成した.項目2についても,計画通りに進行している.また[3] 発動分子としての物性と機能開拓 にも一部着手している.また,「研究実績の概要」欄に記した通り,上記項目1-3から派生した楕円体状回転子を有する分子ベアリング,"oval" な形状を有する平板状ゲストを有する超分子会合体の成果など,関連するいくつかの成果を挙げることができた.上記のように,当初の計画における目標をほぼ完全に達成しただけでなく,関連する研究成果も同時に挙げることができたため,「(1) 当初の計画以上に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
計画にある [1] 発動分子ベアリングの構築,[2] 共有結合開裂による分子ベアリング構築,[3] 発動分子としての物性と機能開拓 のうち,上記の欄に記した通り,項目1と2についてはほぼ計画通りに完了した.2020年度は項目3に注力する予定である.まず項目1,2 で確立した方法を用いて発動分子ベアリングを大量に合成する.合成したサンプルを用いて,主に粉末や単結晶,溶液の状態での種々の物性を測定し,「発動分子」としての機能と物性の発現を目指す.
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